消風散(しょうふうさん)の解説
消風散は、皮膚疾患によく用いられていて、
とくに慢性の湿疹、分泌物が多い湿疹といえばまず消風散、というくらい代表的な漢方薬です。
消風散が使われる皮膚の状態は、次のような特徴があるものです。
- かゆみがつよい
- 慢性化している
- 分泌物が多く、ジクジクしている
- 掻いた跡に浸出液が固まって痂皮(かさぶた)ができる
- 梅雨~夏場に症状が悪化する
消風散の「風」とは、皮膚にかゆみや炎症をもたらしてくる何かを象徴的に表現したもの。
現在ではアレルギー的な関与などをまず考えたりしますが、昔から原因が分からないもの、見えないものは「風」がもたらしていると表現することがよくあります。(カゼのことを「風邪」と言うように)
消風散とは、その「風」を消し去ってくれる薬、という意味です。
構成生薬
配合される生薬の種類が多いので整理しますと…
石膏・知母・苦参・牛蒡子・甘草⇒抗炎症作用(発赤や熱症状を和らげる)
蒼朮・木通・苦参⇒利湿作用(湿性の皮疹を乾燥させる)
当帰・地黄・胡麻⇒滋潤作用(乾燥性の皮疹を潤す)
防風・荊芥・牛蒡子・蝉退・・・袪風作用(かゆみを和らげる)
皮疹を乾かす生薬と、潤す生薬がともにしっかり配合されているのが特徴です。
袪風薬については、温性(防風・荊芥)と寒涼性(牛蒡子・蝉退)のバランスも考えられています。
湿潤と乾燥の両方が混在した湿疹に対応できます。
さまざまな効能の生薬をバランス良く配合することで
慢性化した湿疹、複雑化した病態の皮膚疾患を、ゆるやかに改善させていこうという漢方薬となっています。
方剤全体としては、乾燥させる方向へのはたらきが大きく、
また、やや寒性に偏っています。
ですので消風散単独では、通常はジュクジュクとした部分のある(湿潤性の)湿疹によく用いられ、
かゆみをともなうもの、夏になると悪化するものに適しています。
効能効果
【医療用エキス製剤】
ツムラ
分泌物が多く、かゆみの強い慢性の皮膚病(湿疹、蕁麻疹、水虫、あせも、皮膚そう痒症)
コタロー
長年なおらない頑固な皮膚疾患で患部が乾燥あるいはうすい分泌液があり、夏期または温暖時に悪化しやすいもの。
湿疹、蕁麻疹。
オースギ
慢性湿疹(分泌物の多いもの)
【薬局製剤】
体力中等度以上の人の皮膚疾患で、かゆみが強くて分泌物が多く、ときに局所の熱感があるものの
次の諸症:湿疹・皮膚炎、じんましん、水虫、あせも
消風散のポイント
生薬の配合のバランスが良いので、湿疹のファーストチョイスとして使用されたり、
消風散をベースとして他の漢方薬と組み合わせて使用されたりします。
単独で用いる場合は、燥性・寒性に偏りますので、
基本的に、皮疹の湿潤(ジクジク)している部分があり、痒みのあるものに適します。
煎じ薬ならば、
熱感が強ければ石膏・知母を増量、
湿潤がひどいときは当帰・胡麻を減らし、蒼朮・苦参・木通・牛蒡子を増やす
乾燥傾向になれば逆に蒼朮・苦参・木通などを減らし、当帰・胡麻を増やす
などの加減によって、様々な状態の湿疹全般に対応ができる方剤です。
エキス製剤ではそれは難しいので
他の漢方薬と併用しつつ、それらとの比率を変えたりしながら対応されることがあります。
補足・注意点
必ずしもお湯で溶いて服用する必要はなく、冷服でかまいません(味も不味いですし)。
比較的長期間処方されることがありますが、補気薬の配合がほぼありません。体力の低下しているときには漫然と使用することは避けてください。
胃腸虚弱な方は、食欲不振、悪心、胃部不快感、軟便、下痢などの消化器症状に注意が必要です。
湿邪を生じやすい食事(甘いもの・脂っこいもの・アルコールなど)でも皮膚疾患が悪化することがありますので、食養生も重要です。
エキス剤はごく稀に外用薬として利用されることがあるかもしれません。
出典
『外科正宗』(17世紀)
風湿、血脈に浸淫し、瘡疥を生ずることを致し、瘙痒絶えざるを治す。および大人小児・風熱・癮疹身に遍く、雲片斑点、たちまち有り、たちまち無き、並びに効あり。
(訳)⇒風湿の邪が血脈に侵入し、できものができたり、痒みが止まらないものを治します。ならびに、大人も小児も、風熱のじんましん全般、雲片のような斑点が出たり消えたりするものにも効果があります。
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