九味檳榔湯(くみびんろうとう)の解説
九味檳榔湯は、
強力に浮腫や水腫を除く作用があるため、
水毒体質の人の、その水毒による様々な症状(関節の痛みやはれ、倦怠感、動悸、息切れなど)に応用されます。
構成生薬について
※もともとは名前のとおり9種類の生薬で構成されていたものですが、現在エキス製剤でよく用いられるのは、呉茱萸と茯苓が加味されたものです。
※※市販薬(第2類医薬品)では、大黄が入っていないものがあります。
この方剤の主薬となるのが、檳榔子です。
檳榔子は逐水作用があります。水っぽい下痢をさせる、という作用です。
大黄と併用することで瀉下作用を強化しています。
この2つで身体の余分な水や湿が排泄されます。
呉茱萸や茯苓も利水にはたらきまして、浮腫・水種を改善します。
厚朴・橘皮・木香・蘇葉などの理気作用の配合が多いことも特徴で、
厚朴・木香は、腸のぜん動運動を調節し、腹満(お腹の張った痛み)を除き、
橘皮・呉茱萸・生姜・蘇葉は、悪心や嘔吐を軽減します。
つまり、一方では(強制的に)水分を排泄させながら、
もう一方では胃腸を整える効果ももっています。
効能効果
医療用エキス製剤(コタローのみ)
心悸亢進、肩こり、倦怠感があって、便秘の傾向があるもの。
脚気、高血圧、動脈硬化、及びこれらに伴う頭痛。
市販のエキス製剤
体力中等度以上で、全身倦怠感があり、とくに下肢の倦怠感が著しいものの次の諸症:
疲労倦怠感、更年期障害、動悸、息切れ、むくみ、神経症、胃腸炎、関節のはれや痛み
九味檳榔湯のポイント
添付文書の適応症だけでは分かりづらいと思いますが、
とくに脚(ふくらはぎ等)のしびれ・痛み、脚のだるさ、脚の倦怠感に使われることが多い漢方薬で、
それ以外には、基本的には、水毒体質の人、浮腫傾向のある人に幅広く用いられます。
起床時に顔がむくんでいるとか、体が重だるいとか。
理気薬の配合が多いので、理気剤と分類することもできます。
気滞(神経症、抑うつ、憂うつ)をともなう時や、気滞の腹満や便秘に適して、使われることもあります。
便秘傾向の方が適しますが、便秘がなくても使われることがあります。
体力の低下している人や、下痢や軟便のとき(脾気虚)は適しません。
出典
本朝経験方です。
(呉茱萸・茯苓を加えているのは浅田宗伯の『勿誤薬室方函口訣』 )
日本ではもともとは浮腫をともなう脚気(湿脚気)の治療に用いられた漢方薬です。
ただし、漢方で脚気というのは、ビタミンB1欠乏による疾患ということではなく、脚がしびれる、むくむ、重だるいといった脚の具合が悪くなる症状をともなう病気という意味です。
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