5.芳香化湿薬とは
芳香化湿薬は、芳香があって、湿を去り、脾のはたらきを助ける効能をもつ生薬です。
袪風湿薬が経絡などの湿邪を取って関節の痛みなどを改善するに対して、
芳香化湿薬は主に内臓(中焦)の湿を除去し、それにより特に脾の消化吸収のはたらきを改善させることに用いられます。
脾は湿を嫌う
脾は運化を主るものです。
飲食物を消化して栄養物質を作り出し、吸収した栄養物質を全身に送り出す、という大事な機能(これを運化と言う)を脾が担っています。
一方、湿邪が中焦の部分(脾胃)に停滞すると、気の動きが妨げられるので、脾の運化作用に影響が出ます。
湿邪は消化機能を障害しやすいものです。
しかも、脾のはたらきが低下していれば、飲食物も停滞し、津液の運輸が不十分なことになるため、さらに湿邪を感受しやすい状況になってしまいます。
「脾」は湿を嫌いますが、逆に、燥や暖、芳香のものを好みます。
芳香化湿薬は辛温性の性味と芳香をもつのが特徴であり、脾が喜ぶ薬です。
適応症状
芳香化湿薬の適応証は、湿阻中焦証とか、湿困脾土証とか、湿濁内阻証とか、と言われます。
表現の違いはありますが、本質は同じものです。
湿邪が中焦(脾胃)に存在していて、気機を阻滞させます。
胃気は本来、飲食物を下に降ろしますし(下降)
脾気は本来、栄養物質を引き上げます(上昇)。
湿邪によってそれらの昇降のバランスが崩れて、脾胃の消化吸収のはたらきが低下します。
胃気が下降されないので、脘腹痞満(胃のつかえ)、嘔吐、呑酸などの胃気上逆の症状、
脾失健運によって、食欲不振(納保)、下痢、疲れやすいなどの症状が生じている状態です。
芳香化湿薬と配合する薬
脾胃の湿邪の特徴を考えた場合、おおまかには以下のようなことがあります。
- 湿には粘滞の性質があって気の巡りを阻害しやすい
- 湿には寒湿と湿熱の違いがある
- 湿には外界から体内に侵入してくるものと、脾虚によって内から生じるものがある
ということで、芳香化湿薬を使用する場合は、これらのことを考慮して他の生薬を配合しながら用いられます。
注意点
芳香化湿薬だけでは、温・燥の性に偏ります。陰虚血燥には慎重に用いる必要があります。
また、芳香化湿薬は、芳香つまり芳(かぐわ)しい香りによる効果も期待して使用する薬です。アロマ的効果です。煎じ薬の場合には、長時間煎じてしまうと芳香成分が揮発し過ぎて、効果が不完全になるおそれがあります。
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