脱毛・抜け毛・薄毛の漢方薬
最近、髪のボリュームが減ってきた…
シャンプーやドライヤーの後に、抜け毛が増えている気がする…
頭頂部や分け目が薄くなってきたのが気になる…
髪の変化は、見た目の印象だけでなく、自信や気持ちにも大きく影響します。
現代では、ストレス・食生活の乱れ・加齢・ホルモンバランスの変化など、髪の健康を損なう要因が増えています。
しかし漢方では、髪は単に頭皮だけの問題ではなく、全身の健康状態を映す鏡と考えます。
髪は「血余(けつよ)」と呼ばれ、血の充実度や体の栄養状態を表す存在です。
髪の成長には、十分な栄養(血)と活力(気・腎精)が必要であり、漢方では体質や原因を見極め、内側から髪を育むアプローチを行います。
漢方で考える脱毛・抜け毛・薄毛の原因と対応する漢方薬例
① 血虚(けっきょ)タイプ
特徴:血が不足して髪に栄養が届かない。髪が細く、パサつきや白髪も出やすい。肌の乾燥や目の疲れを伴うこともあります。女性のびまん性薄毛にも多いタイプです。
代表的な漢方薬例:
四物湯(しもつとう):血を補い、髪や肌を潤す基本処方
当帰飲子(とうきいんし):かゆみや乾燥を伴う頭皮トラブルにも
② 腎虚(じんきょ)タイプ
特徴:加齢や慢性疲労により「腎精」が不足し、毛根の働きが弱り髪の質が低下します。抜け毛・薄毛が徐々に進行し、腰や膝のだるさ、耳鳴りを伴うこともあります。男性型脱毛症にも多いタイプです。
漢方では「腎の華は髪」と言われ、髪の艶や量は腎の健康状態を反映します。腎精が不足すると髪はやせ、色つやも失われやすくなります。
代表的な漢方薬例:
八味地黄丸(はちみじおうがん):腎陽を補います。冷えや足腰のだるさを伴う場合に
杞菊地黄丸(こぎくじおうがん):肝腎を養います。疲労で手足のほてったり、眼精疲労、かすみ目を伴う場合に
③ 湿熱(しつねつ)タイプ
特徴:皮脂分泌の多い頭皮や炎症による脱毛。フケ・かゆみ・赤みを伴うことが多く、頭皮環境の悪化から薄毛につながる場合も。脂っこいもの、味の濃いもの、アルコール類などの過剰な摂取が原因のことがあります。
代表的な漢方薬例:
十味敗毒湯(じゅみがんどくとう):頭皮のかゆみ・フケが多い場合に
茵蔯五苓散(いんちんごれいさん):湿疹が出やすい、汗をかきやすい、頭皮がべたつきやすい等
④肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ
特徴:ストレスや感情の抑圧により「気」の巡りが滞ることで、頭皮や毛根への血流が悪くなります。円形脱毛症や周期的な抜け毛、月経周期に伴う薄毛にも多いです。
代表的な漢方薬例:
加味逍遙散(かみしょうようさん):ホルモンバランスの乱れによる脱毛、ストレス・PMS・更年期症状を伴う場合に
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):神経の使い過ぎで、不安・不眠、のぼせ、動悸などを伴う場合に
その他の代表的な漢方薬
漢方薬名 | 特徴 |
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補中益気湯(ほちゅうえっきとう) | 疲労・気力低下を伴う抜け毛 |
帰脾湯(きひとう) | 心身の疲労、気分の落ち込み |
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) | 血虚タイプで冷え症、むくみやすい |
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) | 瘀血(頭皮への血行不良)タイプ |
など、体質・体調に応じて適した処方をご提案いたします。
漢方的セルフケア
髪は「血余」—体の内側を整えることが大切
漢方では、髪は「血余」(血の余り)と呼ばれ、体の栄養や血の充実度が十分であればこそ、美しく保たれると考えます。
つまり、髪の状態を改善するには、外側からのケアだけでなく、血を補い、巡らせることが欠かせません。
血や腎精をしっかり養うことで、髪のハリ・ツヤ・ボリュームが徐々に取り戻されていきます。
脱毛・抜け毛・薄毛の養生法
抜け毛や薄毛が目立ってきたときは、まず生活習慣を見直すことが大切です。
睡眠不足や偏った食事、過度なストレスは髪の成長を妨げ、症状を悪化させます。
早めのセルフケアと体質に合った漢方で、進行を防ぎ、髪の健康を守りましょう。
- バランスの良い食事:黒ごま、くるみ、山芋、ひじき、赤身肉など
- 質の良い睡眠:髪は夜間に育つため、23時前の就寝を意識
- 頭皮マッサージ:血流を促し、毛根の働きを助ける
- ストレス管理:趣味や運動で気を巡らせる
