食いしばり・歯ぎしりの原因とは?漢方で整える体のバランス

食いしばり・歯ぎしりと漢方

食いしばり・歯ぎしりは体からのサイン

食いしばりや歯ぎしりは、歯やあごの問題として扱われることが多い症状ですが、実際にはストレスや自律神経の乱れ、体の緊張など、全身の状態が関係していることも少なくありません。
夜間の歯ぎしりだけでなく、日中に無意識に歯を食いしばってしまう方も多く、肩こりや頭痛、顎の疲れにつながることもあります。
漢方では、こうした症状を「歯の問題」としてだけでなく、体のバランスの乱れとして捉えます。
この記事では、食いしばり・歯ぎしりの原因と、漢方的な考え方について解説します。

食いしばり・歯ぎしりとは

食いしばりと歯ぎしりの違い

食いしばりや歯ぎしりは、いずれも歯に強い力がかかる状態ですが、その現れ方には違いがあります。

歯ぎしりは、上下の歯をこすり合わせる動きが特徴で、睡眠中に起こることが多く、周囲の人が音に気づくこともあります。

一方、食いしばりは歯を強く噛み締めたままの状態で、日中の作業中や集中しているときなどに無意識に起こることがあります。

これらは医学的にはブラキシズムと呼ばれ、歯に強い力がかかる状態です。
どちらも顎の筋肉に負担がかかりやすく、顎の疲れや頭痛、肩こりなどにつながることもあります。

よくみられる症状

食いしばりや歯ぎしりが続くと、次のような症状がみられることがあります。

  • 朝起きたときに顎が疲れている
  • 顎の関節が痛い
  • 肩こりや首こりが強い
  • 頭痛が起こる
  • 歯がすり減っている

歯科ではマウスピースなどで歯を守る対策が行われますが、体の緊張やストレスが背景にある場合、根本的な改善には体全体の状態を整えることも重要になります。

食いしばり・歯ぎしりの原因

ストレスと自律神経の関係

食いしばりや歯ぎしりの原因としてよく指摘されるのが、ストレスや自律神経の乱れです。

仕事や人間関係でのストレスや不安で、強い緊張状態が続くと、体は無意識に力が入りやすくなります。
その結果、顎の筋肉も緊張し、歯を食いしばる状態が続くことがあります。

また、睡眠中の歯ぎしりも、ストレスによる体の緊張と関係していると考えられています。

体の緊張と筋肉のこわばり

長時間のデスクワークやスマートフォンの使用などで姿勢が崩れると、首や肩の筋肉に負担がかかり、顎の緊張につながることもあります。
顎は頭や首の筋肉ともつながっているため、肩こりや首こりが強い人では、さらに顎の筋肉も緊張しやすくなります。

しかし、食いしばりや歯ぎしりの原因は必ずしも一つに特定できるわけではありません。

その他のよく見られる背景として

  • 睡眠の質の低下…アルコール・カフェインの過剰摂取
  • 睡眠環境…猫背など姿勢の問題・合わない枕
  • ホルモンバランス…月経周期・更年期など
  • 噛み合わせ・歯並びが悪い
  • 無意識の集中…パソコン作業などの没頭時

などが挙げられます。

このように、食いしばりや歯ぎしりは歯だけの問題ではなく、体全体の要素が重層的に関係していることが少なくありません。

漢方でみる食いしばり・歯ぎしり

食いしばりや歯ぎしりは、歯や顎の問題として扱われることが多い症状ですが、漢方では体全体の状態との関係を考えます。

実際の相談でも

  • ストレスが強い
  • 体に力が入りやすい
  • 肩や首の緊張が続いている
  • 眠りが浅い

といった状態が重なっていることが少なくありません。

このようなとき、漢方では主に
「気の巡り」と「筋の緊張」という視点から体の状態を整理します。

気の巡りの乱れ(気滞)

漢方では、ストレスなどによって「気」の巡りが滞る状態を気滞(きたい)と呼びます。

気の巡りが悪くなると、体が緊張しやすくなり、胸や喉のつかえ感、呼吸が浅い、イライラ、筋肉のこわばりなどが起こることがあります。

顎の筋肉が緊張して食いしばりが起こる場合も、このような気の巡りの乱れが背景にあることがあります。

筋の緊張(肝の働き)

もう一つ重要なのが、筋(筋肉)の緊張です。
漢方では、筋や腱の状態は「肝」と関係すると考えます。

ストレスや疲労が続くと、肝の働きが乱れ、筋肉が緊張しやすい(こわばりやすい)状態になることがあります。

顎の筋肉が緊張した状態が続くと、無意識の食いしばりや歯ぎしりが起こりやすくなります。

そのため漢方では、神経の緊張を整える「にはたらく」漢方薬、
また、「筋肉の緊張をやわらげる生薬(芍薬など)を含む」漢方薬を考えます。

睡眠の質との関係

歯ぎしりは、睡眠中に起こることが多い症状でもあります。
疲れているのに眠りが浅い、夜中に何度も目が覚めるといった状態では、体の緊張が十分に抜けないことがあります。その結果、睡眠中に顎の筋肉が緊張し、歯ぎしりが起こることがあります。

漢方では、このような場合には

  • 神経の高ぶり
  • 体の疲労
  • 睡眠の状態

などもあわせて考慮します。

食いしばり・歯ぎしりに使われる漢方薬

食いしばりや歯ぎしりは、症状としては同じでも、背景にある体の状態は人によって異なります。

ストレスが強い人
睡眠の質が低下している人
体の疲労が蓄積している人

など、さまざまです。
歯ぎしりという症状だけで漢方薬を決めるのではなく、体全体のバランスをみて考えていきます。

ストレスや緊張が強い場合

ストレスが強く、体に力が入りやすいタイプでは、気の巡りを整える処方を考えることがあります。

たとえば半夏厚朴湯四逆散加味逍遥散などです。

気の巡りを整えることで、体の緊張がやわらぎ、無意識の食いしばりが軽くなることがあります。

眠りが浅く疲労が強い場合

歯ぎしりは、睡眠の質が低下しているときに起こることもあります。

疲れているのに眠りが浅い、夜中に何度も目が覚めるといった状態では、酸棗仁湯柴胡加竜骨牡蛎湯などを考えます。

睡眠の状態が整うことで、歯ぎしりが軽くなるケースもあります。

体の緊張や筋肉のこわばりが強い場合

肩こりや首こりが強く、体全体がこわばりやすいタイプでは芍薬甘草湯葛根湯などが使われることもあります。

筋肉の緊張がゆるむことで、顎の負担が軽くなることがあります。

これらのように、食いしばりや歯ぎしりが続く場合は、歯科的な対策に加えて、体の状態を整える視点も一つの方法です。

なぜ歯ぎしりに抑肝散が使われるのか

食いしばりや歯ぎしりの漢方薬として、よく名前が挙がるのが抑肝散(よくかんさん)です。

抑肝散は、もともと小児の夜泣きなどに用いられてきた漢方薬ですが、
現在では、神経の緊張が続いている状態や、体に力が入りやすい状態(漢方でいう肝の乱れ)に対して用いられることがあります。
名前の通り、肝を抑える作用があります。

食いしばりや歯ぎしりでも、

  • ストレスが強い
  • イライラしやすい
  • 眠りが浅い
  • 体に力が入りやすい

といった状態が背景にある場合に適しています。

抑肝散の生薬構成

抑肝散は次の生薬から構成されています。

柴胡・釣藤鈎・当帰・川芎・白朮・茯苓・甘草

このうち、特に重要なのが柴胡釣藤鈎といった生薬です。

神経の高ぶりを整える生薬

抑肝散に含まれる柴胡は、気の巡りを整える代表的な生薬です。
ストレスや精神的な緊張が続くと、気の巡りが滞り、体に力が入りやすくなります。
柴胡はこのような状態を整え、体の緊張をやわらげる働きを持つと考えられています。

また 釣藤鈎も肝の緊張を鎮め、筋のけいれん/ひきつりを抑える生薬として知られています。

それに、当帰や川芎など生薬の組み合わせによって気血水を整え、体の緊張や神経の興奮をやわらげる働きが期待されます。

(胃腸が弱い場合は、抑肝散加陳皮半夏よくかんさんかちんぴはんげが良いこともあります。抑肝散加陳皮半夏は、抑肝散に二陳湯にちんとうを合方したものです。)

筋肉の緊張が強い場合は芍薬も重要

食いしばりでは、顎の筋肉が強く緊張していることも多く、
漢方ではこのような筋肉のこわばりに芍薬が重要な役割を持つことがあります。

芍薬は、筋肉の緊張をやわらげる働きを持つ生薬で、こむら返りなどの筋肉のけいれんにも用いられます。

そのため、神経の高ぶりを整える抑肝散に、筋肉の緊張をやわらげる芍薬の働きが加わることで、より体の緊張が抜けやすくすることもできます。

抑肝散加芍薬黄連という考え方

抑肝散加芍薬黄連よくかんさんかしゃくやくおうれんは、

抑肝散を基本にしながら、
芍薬によって筋肉の緊張をやわらげ、
黄連によってイライラを抑える(肝火を冷やす)構成になっています。

抑肝散に芍薬を加えることで、芍薬甘草湯の組み合わせも生まれます。

抑肝散加芍薬黄連(薬局製剤)の取り扱い・購入方法

抑肝散加芍薬黄連は、医療用のエキス製剤にはありません。
抑肝散に、芍薬甘草湯を併用すると、甘草の重複で過剰摂取になりやすく、偽アルドステロン症が起こりやすくなりますので注意が必要です。

食いしばり・歯ぎしりが続くときは

食いしばりや歯ぎしりは、歯や顎の問題、またはクセとして扱われることも多い症状ですが、
実際にはストレスや睡眠の状態、体の緊張などが関係していることも少なくありません。

マウスピースなどの歯科的な対策に加えて、体全体の状態を整えることで、症状が軽くなる場合もあります。

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