【熄風止痙薬】~釣藤鈎・天麻・羚羊角・地竜・白僵蚕・全蝎・蜈蚣~

熄風止痙薬

15-(2) 熄風止痙薬(そくふうしけいやく)

釣藤鈎(ちょうとうこう)

釣藤鈎(チョウトウコウ)

アカネ科カギカズラの鈎(カギ)状をした短い茎枝(トゲ)

【性味】甘 微寒(涼)
【帰経】肝 心包
【効能】熄風止痙 清熱平肝

熄風止痙・清熱平肝
肝風を抑え、痙を止める効能に優れています。
肝気の緊張の緩解、鎮痙鎮静の作用を期待して、柴胡などと配合されます。⇒抑肝散
また熱極生風の高熱・痙攣に用いることができます。
肝熱を清し、肝陽も抑える効能があるので、肝火上炎や肝陽上亢の頭痛、めまい、ふらつきなどの症状に、防風菊花などと用いられます。⇒釣藤散
現在は肝陽上亢に属するような、虚証の高血圧症に随伴する症状(頭重、のぼせ、肩こり、耳鳴り、めまい等)に対してもよく応用されています。⇒七物降下湯、当帰芍薬散加黄耆釣藤
注意
煎じ薬の場合、釣藤鈎は長時間(20分以上)煎じると薬効が減少するという報告があり、後煎(後から加える)が良いとされます。

天麻(てんま)

ラン科オニノヤガラの塊茎(を蒸したもの)
※近年になって(中国で)人工栽培が可能になっていますが、まだ比較的高価な生薬のひとつです。

【性味】甘 平
【帰経】肝
【効能】熄風止痙 平肝潜陽 袪風通絡

平性で、寒熱虚実を問わず用いることができ、肝風内動を治す常用薬です。
ただし、単味での効力は強くなく、適切な配合によって効果が顕著になるとされます。(『傷寒論』や『金匱要略』の方剤には使われていません。

熄風止痙:熱性けいれん(ひきつけ)や、破傷風の強直性痙攣、後弓反張などに。
平肝潜陽釣藤鈎黄芩などを配合して、肝陽上亢のめまい、頭痛、ふらつきに。半夏や白朮などと配合して痰濁上擾によるめまい・悪心・嘔吐などに用いられます。⇒半夏白朮天麻湯
袪風通絡秦艽羌活牛膝などと風寒湿痺の関節痛やしびれに応用されます。

羚羊角(れいようかく)

ウシ科サイガレイヨウ(カモシカ)の角

【性味】鹹 寒
【帰経】肝 心  肺
【効能】平肝熄風 清肝明目 清熱解毒
  • 平肝熄風:清熱熄風の力に優れ、熱極生風の高熱やけいれんに対する要薬です。釣藤鈎菊花などと用いられます。また、肝陽上亢のふらつき、めまい、頭痛に、菊花石決明などと配合されます。
  • 清肝明目:肝熱を清する効能によって、肝火上炎の目の充血、頭痛などに、竜胆草決明子などを配合して用いられます。
  • 清熱解毒:温熱病の高熱、意識障害、うわ言などの症状に、またかつては黄耆や金銀花と併用して痘疹(天然痘)後の熱が残るものにも使われていたようです。

温病の症状に用いられる、銀翹散、天津感冒片、金羚感冒散、銀翹解毒散など、市販薬の中にもレイヨウカクが配合されている製品が販売されていますが、現在は取引が規制されていて入手が困難なので、メーカーの在庫によっては、今後は販売が中止されたり、レイヨウカクを含まない配合に変更されてくるかもしれません。

地竜(じりゅう)

フトミミズ科のミミズの全体(内容物を除去後、あるいはそのまま、キレイに洗って乾燥したもの)

【性味】鹹 寒
【帰経】肝 脾 膀胱
【効能】清熱熄風 平喘 通絡 利尿

現代人には信じられないかもしれませんが、昔から(日本でも)民間療法として、ミミズは畑などで簡単に手に入る解熱鎮痛剤として使用されていた背景があります。
現在では使いやすい単味の製剤があり重宝されています。
ミミズなんか絶対飲みたくないと思っていても、市販の感冒薬(かぜ薬)の中にも地竜が配合されているものがありますので、箱にはミミズとは書いていないだけで、あなたも知らないうちに服用したことがあるかもしれません。
寒性なので脾胃虚弱の方は注意が必要です。

清熱熄風:高熱によるけいれん、煩躁などに。
平喘:肺熱型の咳、呼吸困難、呼吸促拍などに、単味の粉末で、または麻黄杏仁などと配合して。
通絡:熱痺に属する関節が赤く腫れて熱くて痛み、屈伸のしにくいものに。また、各種の配合によっては寒湿性の痺痛にも。
脳卒中の後遺症でみられるような、気虚・血瘀による経絡の不通で起こる半身不随、言葉のもつれ、筋力低下、しびれなどにも応用されています⇒補陽還五湯
利尿木通車前子などと併用して熱結膀胱による排尿障害、排尿痛に。
その他、近年は高血圧症に伴う症状に使用されることがあります。

白僵蚕(びゃくきょうさん)

カイコガ科のカイコの幼虫が糸を吐く前に白僵菌の感染により硬直死した虫体
※白僵病以外の原因で死んだカイコは薬用にはなりません

【性味】鹹 辛 平
【帰経】肝 肺
【効能】熄風止痙 袪風止痛 解毒散結

全蠍(ぜんかつ)

トクササソリ科キョクトウサソリの全虫体を(そのまま、あるいは食塩水に入れたり塩漬けにして)乾燥したもの

【性味】辛 平 (有毒)
【帰経】肝
【効能】熄風止痙 解毒散結 通絡止痛

蜈蚣(ごしょう)

オオムカデ科のムカデの乾燥虫体

【性味】辛 温 (有毒)
【帰経】肝
【効能】熄風止痙 解毒散結 通絡止痛

熄風止痙薬としての効力は、白僵蚕(穏やか)<全蠍(強い)<蜈蚣(猛烈)とされます。
サソリやムカデを薬酒にして経口摂取する場合には、毒性は心配ないと思いますが、毒を以て毒を制す生薬として参考程度に。

 

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