アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、慢性的に痒みを伴う湿疹が全身に出現し、悪化と軽快を繰り返す皮膚疾患です。
本人や家族に気管支喘息・アレルギー性鼻炎などのアレルギー素因を持つことが多く、遺伝的要因も関与しています。
特に顔や腕など目立つ部位の湿疹は、精神的ストレスや対人関係への影響も大きく、不眠・集中力低下・生活の質の低下を招くことがあります。
この記事では、現代医学的な標準治療と漢方薬治療の特徴・注意点について詳しく解説します。
アトピー性皮膚炎の標準治療(現代医学的アプローチ)
① 薬物治療
炎症の程度に応じて、ステロイド外用薬や免疫抑制剤(タクロリムス軟膏など)を使用します。必要に応じて、痒みを抑える抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服します。
② スキンケア
- 入浴やシャワーで皮膚を清潔に保つ
- 保湿剤で乾燥を防ぐ
- 爪を短く切り、引っ掻きによる皮膚損傷を予防する
③ 悪化因子の除去
食べ物、汗、乾燥、衣類や洗剤などの物理刺激、細菌・ダニ・ホコリ・ペットの毛、精神的ストレスなど。複数の要因が絡む場合もあります。
ステロイド外用薬での治療を希望しない場合でも、スキンケアと悪化因子の対策は必須です。特に大人では、社会的ストレスや疲労、睡眠不足などで症状が再燃することがあります。
ステロイド外用薬の正しい使い方
ステロイド外用薬は、強さ(5段階)・剤形(軟膏/クリーム)・使用量・塗布回数を皮膚の状態に合わせて選びます。
- 炎症が強いときは、十分な強さ・量の外用が必要
- 症状の軽快に合わせて強さを段階的に調整
- 市販のステロイド外用薬は医療用よりも弱め
適切な外用を行わないと、症状が長引いたり悪化することがあります。
必ず医師の診察を受け、使用方法の指導を受けることが大切です。
漢方薬治療の特徴
皮膚の再生力を高める役割
ステロイド外用薬が「炎症という火を消す」役割なら、漢方薬は「燃えた後の壁を修復し、燃えにくくする大工」のような存在です。
皮膚の自己治癒力やバリア機能を高めることで、再発しにくい状態を目指します。
アトピーの漢方的な考え方
- 皮膚の潤い不足=「血」の不足
- バリア機能の低下=「気」の不足
- 水分や栄養が不足し、皮膚が乾燥しやすい状態は「陰虚(いんきょ)」体質
- 外界から体を守る力である「衛気(えき)」の弱さも関与
そのため、アトピーに使う漢方薬は
- 炎症や痒みを抑える生薬
- 「血」を補う生薬
- 「気」を補う生薬
などを組み合わせて選びます。
アトピー性皮膚炎によく用いられる漢方薬
症状や体質に応じて、以下の処方が使われます。
- 黄連解毒湯 … 強い炎症・熱感を鎮める
- 温清飲 … 炎症を抑えつつ「血」を補う
- 当帰飲子 … 痒みを抑え「血」を補う
- 黄耆建中湯 … 「気」を補い皮膚の防御力を高める
- 十全大補湯 … 「気」と「血」をともに補う
- 消風散 … 炎症・痒みを抑え、浸出液が多い皮膚にも適する
「皮膚は内臓の鏡」。皮膚の見た目だけでなく、体全体のバランスを整えることが重要です。
注意点と生活改善の重要性
- ステロイド外用薬を急に中止すると、症状のぶり返し(リバウンド)が起こることがあります
- ステロイドの減量・中止は必ず医師の指示に従う
- 漢方薬は生活習慣の見直しと併用してこそ効果が高まります
(例:十分な睡眠、バランスの取れた食事、ストレス管理)
▼ 体質別の詳しい漢方薬と養生法はこちら
あなたのアトピー性皮膚炎のタイプに合わせた処方と生活の工夫を解説しています。
→ アトピー性皮膚炎のタイプ別漢方薬と養生法(詳細ページ)

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