【利水通淋薬】~車前子・滑石・木通・地膚子~

利水通淋薬

6-(2) 利水通淋薬(りすいつうりんやく)

利水通淋薬は、利水薬の中でも特に、寒性で利水通淋作用に優れる生薬です。
熱淋(湿熱淋証)に用いることができます。
小便不利(尿がでにくい)、頻尿、残尿感、排尿痛などのいわゆる膀胱炎様症状に適しています。

車前子(しゃぜんし)

車前子(シャゼンシ)

オオバコ科オオバコの成熟種子

【性味】甘 寒
【帰経】腎 肝 肺
【効能】利水通淋 止瀉 清肝明目 清肺化痰

①利水通淋
車前子は熱淋に対する常用薬です。
頻尿、残尿感、排尿困難などの症状によく使用されます。
例⇒五淋散清心蓮子飲牛車腎気丸
②止瀉
白朮や茯苓など、他の利水薬や脾虚を補う生薬などと配合することで、止瀉作用を強めることができます。
消化管からの水分吸収を促進し、体内の水分代謝を改善するので、利尿によって下痢を和らげます。
③清肝明目
肝経の熱を清する作用によって、目の充血、腫れ、痛み、または視力低下に応用することができます。⇒明朗飲
肝熱(実証)の場合は、菊花竜胆などと使用したり、肝腎陰虚(虚証)の場合は生地黄や枸杞子などと使います。
④清肺化痰
清熱化痰薬と一緒に配合して、肺熱の咳や痰に用いることができます。
※清熱や去痰作用は車前草(オオバコの全草)の方が優れるとされています。

滑石(かっせき)

日本薬局方の「滑石」は含水ケイ酸アルミニウムおよび二酸化ケイ素からなる鉱物
※鉱物学上の「滑石」(タルク)は水酸化マグネシウムのケイ酸塩からなる鉱物

【性味】甘 淡 寒
【帰経】胃 膀胱
【効能】利水通淋 清熱解暑 袪湿斂瘡

①利水通淋
利尿によって下焦(膀胱)の湿熱をとるので、熱淋(尿路系の炎症)の排尿痛に常用されます。⇒猪苓湯、加味解毒湯
②清熱解暑
夏の暑邪による、身熱(発熱)、煩喝(イライラ・のどの乾き)、小便不利(尿が濃い)などの症状に使用することができます。⇒六一散
③袪湿斂瘡
外用薬として、あせもや湿疹、滲出液の多い皮膚炎症に用いられます。
タルクもペビーパウダーに使用されています。

木通(もくつう)

ミツバアケビの花

アケビ科アケビまたはミツバアケビのつる性の茎

【性味】苦 寒
【帰経】心 小腸 膀胱
【効能】利水通淋 瀉熱 通乳

利水通淋 瀉熱
瀉熱と利水の効能をもちます。心火を清し、湿熱の邪を降ろし、小便として排出しますので、心火上炎による口内炎や心煩、または熱淋(排尿痛、尿道灼熱感、排尿困難など)などの症状に使われます。⇒導赤散
また、産後の乳汁不足に対して通乳作用があるとされています。
その他
利水と消炎に働き痛みをとる作用で通導散に、
消炎と湿を除く作用は消風散に、
利水で水滞をとることで血行を促す効果を期待して当帰四逆加呉茱萸生姜湯などに、配合されています。

※ウマノスズクサ科のキダチウマノスズクサを基原とする類似生薬「関木通」にも利水作用がありますが、含有するアリストキア酸により腎障害の副作用が起こることが知られています。個人で海外の漢方薬を購入する際は注意が必要です。

地膚子(じふし/ぢふし)

アカザ科ホウキギの成熟果実
一般には「畑のキャビア」こと「とんぶり」と呼ばれています。

【性味】苦 寒
【帰経】膀胱
【効能】清熱利水 止痒

利水作用は穏やかです。
漢方薬に配合するというよりも、薬膳料理で使われることが多いです。
また民間療法では、外用または入浴剤として、皮膚の湿疹や掻痒に使われていたようです。

 

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