桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)の解説
桂枝加竜骨牡蛎湯は、
桂枝湯に、竜骨と牡蛎を加えたものです。
竜骨と牡蛎によって、長期の疲労にともなう脳の興奮性が高まった状態を治す漢方薬です。
構成生薬
桂枝湯に、竜骨と牡蛎が入ったものです。竜骨と牡蛎は一緒に使われることが多いペアです。
桂枝湯は一般には虚証の感冒(カゼ)に用いられる漢方薬ですが、ここでの役割は主に、身体機能の調和です。
そこに竜骨・牡蛎によって、自律神経系の興奮とか、精神不安をしずめるはたらきが加わります。
不安、不眠、多夢、動悸、驚きやすいなどの症状に対応します。
さらに、
竜骨・牡蛎の効能には、収斂固渋といって「漏れる」ことを防ぐはたらきがあります。
陽虚・気虚の自汗(とまらない汗)、陰虚の盗汗(寝汗)、腎虚の遺精(夢精)などに対応します。
ということで桂枝加竜骨牡蛎湯は、
陰陽気血などが不足し、身体が弱っている状態のもので、
興奮しやすくなっていて、精神を落ち着かせたいとき、
もしくは、泌尿器系または性的な衰弱がみられるときなどに用いることができます。
効能効果
【医療用エキス製剤】
ツムラ
下腹直腹筋に緊張のある比較的体力の衰えているものの次の諸症:
小児夜尿症、神経衰弱、性的神経衰弱、遺精、陰萎
クラシエ他
体質の虚弱な人で疲れやすく、興奮しやすいものの次の諸症:
神経質、不眠症、小児夜泣き、小児夜尿症、眼精疲労
コタロー他
神経症状があり、頭痛、のぼせ、耳鳴りなどを伴って疲労しやすく、臍部周辺に動悸を自覚して排尿回数、尿量ともに増加するもの。
神経衰弱、心悸亢進、性的ノイローゼ、陰萎、小児夜尿症、夜驚症、脱毛症。
【薬局製剤】
体力中等度以下で、疲れやすく、神経過敏で、興奮しやすいものの次の諸症:
神経質、不眠症、小児夜泣き、夜尿症、眼精疲労、神経症
使用のポイント
小児の場合は、神経質、些細なことを気にする、夜泣きやおねしょが治らない、チック症状がみられる。
青年期以降は、ストレスや精神的ものの影響で、性的な問題が生じている。
その他、精神的疲れによる、不安、不眠、目のかすみ、めまい、のぼせなどに応用されます。
また、頭髪が抜けやすく、フケが多いというのも使用目標になることがあります。
長期に処方されることが多いです。甘草が配合されていますので、偽アルドステロンの副作用(むくみ、手足がだるいなど)に注意してください。
名前が似ている「柴胡加竜骨牡蛎湯」は、実証向きの漢方薬で、混同しないように気をつけてください。
出典
『金匱要略』(3世紀)
夫れ失精家は、少腹弦急し、陰頭寒く、目眩し、髪落つ。脈は極虚にして芤遅、清穀亡血するは失精と為す。脈は諸を芤動微緊に得れば、男子は失精し、女子は夢交す。桂枝加竜骨牡蛎湯之を主る。
【解説】
失精家とは、睡眠中に射精してしまう人のことです。性交によらず無意識のうちに精液が漏れてしまう現象を遺精(睡眠中だと夢精)といいます。ただの夢精だけでは正常なことが多いのですが、ここでは他にも症状がみられます。下腹部が張って痛い、陰茎が冷える、目がくらむ、脱毛が生じる等。これらは腎陽虚。また不消化便(水様性下痢)や貧血、これらは脾陽虚で、やはり失精することがある。男性は遺精をし、女性は夢の中で交わる。このようなときは桂枝加竜骨牡蛎湯が良い。(脈の部分は省略してます)
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