葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
葛根湯の加味方のひとつ。
その名のとおり、葛根湯に川芎と辛夷を加えたものです。
「葛根湯加辛夷川芎」のように川芎と辛夷の並びが違うメーカーのもありますが、同じことです。
おもに、葛根湯の症状と、そこに鼻の症状(鼻がつまる、鼻水が出るなど)があるときに用いられます。
出典
『本朝経験方』(日本の経験方)
浅田宗伯の副鼻腔炎に対する処方として作られた「葛根湯加川芎大黄」が基になっており
それを大塚敬節らが川芎と辛夷のペアで応用し、「葛根湯加川芎辛夷」として定着したものと考えられています。
構成生薬
葛根湯に川芎と辛夷を加えたものです。
辛夷は、寒くてつまった鼻の通りを良くする効果があります。
川芎は、カゼの頭痛にも効果があります。
また、川芎も辛夷も温性ですので、葛根湯よりも体を温めるつよさが増しています。
効能・適応症状
次のような症状に利用されることがあります。
- 自然発汗がないカゼの初期の症状(頭痛、発熱、悪寒など)
- 頭痛、項背部や肩のこりをともなうカゼで、鼻の症状があるもの
- 慢性鼻炎、急性または慢性副鼻腔炎、肥厚性鼻炎、鼻づまり、嗅覚異常
- 副鼻腔炎によって起こる肩こりや頭痛
添付文書上の効能効果
医療用エキス製剤
鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎(ツムラ・クラシエ他)
蓄膿症、慢性鼻炎、鼻閉(コタロー)
薬局製剤
比較的体力があるものの次の諸症:鼻づまり、蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎
使用のポイント
基本的には葛根湯と同じ症状に使うことができます。
川芎には排膿作用があり、辛夷は鼻の通りを改善します。
そのため鼻炎、副鼻腔炎で、鼻づまり気味の状態によく用いられます。
ベースはやはり葛根湯ですので、使うポイントとしては、
・カゼの初期
・悪寒と発熱
・汗なし
・項背部の強ばりがある
そして川芎と辛夷により、とくに頭痛や鼻づまりをともなうものに適します。
鼻水と鼻づまりに効果があるということで、カゼに引き続いて起こる副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、または蓄膿症のときの鼻閉感が強い場合にも使われることがあります。
川芎には血行を良くして痛みを和らげる作用もあるため、副鼻腔炎でおこる肩こりや頭痛にも対応しているかたちです。
⇒ほかに「鼻づまり」に使われる「辛夷清肺湯」との違い・使い分けはこちら
副作用・注意点
慢性的な症状に処方されることもありますが、葛根湯と同様、長期の連用には適していませんし、虚証の人は使えません。
効果があれば通常は数日以内に、鼻閉は改善されます。漫然と服用してはいけません。
ひどく胃腸が弱い人、 体力がない人、消耗している人では、食欲がなくなったり、疲れがきたりすることがあります。
麻黄が配合されているので、悪心、胃部不快感、不眠、動悸などの麻黄による副作用に注意してください。
黄~緑色のドロッとした膿性の鼻水が(大量に)でる場合、つまり化膿性炎症が強いときは、桔梗石膏を併用するのが良いとされています。
葛根湯加桔梗石膏、または、葛根湯加川芎辛夷+桔梗石膏です。
鼻閉感はなくて、うすい水っぽい鼻水の場合、 葛根湯加川芎辛夷よりも小青竜湯の方が適します。
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