関節痛の漢方薬|痺証(風・寒・湿・熱)と体質別改善

関節の痛み、漢方で体質から整える

関節痛の漢方薬

「膝が痛くて階段がつらい」
「天気が悪いと関節が重だるくなる」

年齢のせいだから仕方ない、と諦めていませんか。
関節痛は加齢や体重、外傷などの要因だけでなく、体質や気候の影響が複雑に関わる症状です。

西洋医学では変形性関節症や慢性関節リウマチなどが原因として知られていますが、漢方ではもう少し幅広く捉えます。
関節を支える「腎」の力が衰えたり(腎虚)、血流が滞ったり(瘀血)、気血が不足して筋肉や関節を養えなくなったり(気血両虚)することが、慢性的な関節痛の背景となります。
さらに、風・寒・湿・熱といった外的な要因が加わることで痛みが悪化する状態を「痺証(ひしょう)」と呼び、痛みの性質や現れ方の違いを見極めて治療に活かしていきます。

つまり漢方では、体の内側の虚弱と外からの影響が重なって関節痛が生じると考えるのです。そのため、体質と環境の両方に目を向けて調整していくことが、根本的な改善につながります。

漢方の視点(体質から見た関節痛)

関節は「腎」と「肝」に関係が深いとされます。

腎は骨や関節を支え、肝は血を貯え筋肉・腱の働きを調えます。
したがって、腎や肝の機能が弱ると、関節に痛みやこわばりが出やすくなります。

また、関節痛は「痺証(ひしょう)」と呼ばれ、風・寒・湿・熱といった外的要因が関節に侵入し、気血の流れを妨げることで生じると考えられています。つまり、関節痛は 体質的な虚弱と、外からの影響の両方が関与する のが特徴です。

西洋医学的には、関節痛の代表的な原因には、変形性関節症、関節リウマチ、外傷後の変化などがあります。加齢や肥満、過度な負担で関節軟骨がすり減ること、免疫の異常で炎症が続くことなど、背景は多様です。西洋医学的には抗炎症薬・リハビリ・体重管理が中心となりますが、症状の個人差が大きいため補完療法として漢方が注目されています。

体質的な背景

腎虚(じんきょ)
加齢や慢性疲労により腎の力が弱まると、骨や関節を支える力が不足し、膝や腰のだるさ・痛みが出ます。腎陽虚では冷えやむくみを伴い、腎陰虚ではほてり・乾燥・寝汗などを伴うことがあります。

瘀血(おけつ)
血の巡りが悪く、関節の一部に痛みやこわばりが集中します。刺すような痛み、夜間悪化、局所の腫れや感覚の麻痺、関節の変形などもみられることがあります。長期化・慢性化している痛みにも多いタイプです。

気血両虚(きけつりょうきょ)
気と血の不足により関節や筋肉を十分に養えない状態です。動かすとだるく、疲れると痛みが増すのが特徴で、瘦せていたり、全身の倦怠感や息切れ、めまいなどを伴うことがあります。

痺証(外邪による関節痛)

関節痛は「痺証ひしょう」として、風・寒・湿・熱といった外的要因が関節にとどまることで悪化します。それぞれの特徴は次の通りです。

風痺(ふうひ)
「風」の影響による痛み。発症の初期に多く、痛みやシビレがあちこちに出たり、痛む部位が移動しやすいのが特徴です。

寒痺(かんぴ):
「寒」の影響による痛み。冷えると悪化し、温めると楽になる。痛みは強く、場所も固定しやすい傾向があります。

湿痺(しっぴ):
「湿」の影響による痛み。重だるい痛みで、雨の日や梅雨時に悪化しやすい。むくみや関節の腫れを伴うもあります。

熱痺(ねっぴ):
「熱」の影響による痛み。関節が赤く腫れて熱感を帯び、炎症性のリウマチなどにみられます。急に生じることもありますし、風・寒・湿の邪が長く停滞することで、熱に転化することもあります。

まとめ

漢方では関節痛を、腎虚・瘀血・気血両虚といった体質の偏りと、風・寒・湿・熱による痺証の両面から捉えます。
「体の内からの虚」と「外邪」が重なったときに、関節痛は悪化しやすくなります。体質と環境の両方を丁寧に見極めることが、関節痛の根本的な改善につながります。

よく用いられる漢方薬(例)

関節痛は「腎虚・瘀血・気血両虚」といった体質の影響と、風・寒・湿・熱による「痺証」が複合的に絡んで起こります。実際には単独で現れることは少なく、複数の要因が重なります。急性期と慢性期でも用いる処方は異なります。ここではあくまで代表的な例をご紹介します。

腎虚が背景にある関節痛
八味地黄丸牛車腎気丸
(加齢・慢性疲労で足腰がだるく、冷えや尿トラブルを伴う場合に)

瘀血が背景にある関節痛
疎経活血湯桂枝茯苓丸
(血流が滞り、痛みが固定して慢性化している場合に)

気血両虚が背景にある関節痛
十全大補湯大防風湯
(体力が不足し、疲労で痛みが悪化するタイプに)

痺証(風・寒・湿・熱)の影響を受ける関節痛
薏苡仁湯麻杏薏甘湯桂枝加朮附湯防已黄耆湯など
(季節や天候、または生活環境の影響を受けて悪化しているタイプに用いられることがある)

急性に関節が腫れて熱を持つ場合(熱痺)と、冷えて悪化する場合(寒湿痺)では使う処方が異なり、また長引いて慢性化すれば体質を立て直す処方へと切り替わります。そのため「どの薬が効くか」ではなく、体質や経過に応じた方剤選びが重要になります。

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