【三物黄芩湯】の解説~手足のほてりを潤して冷ます漢方薬~

三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)の解説

黄芩おうごんを含む3種類の生薬で構成されるということで「三物黄芩湯」。

主に、四肢の煩熱、つまり不快な手足のほてり、または、手足のほてりが原因で眠れないときに用いられている漢方薬です。

東洋医学的には、陰虚火旺いんきょかおうに対する基本的な方剤となっています。

夜の手足のほてりは「陰虚いんきょ」の症状のひとつです。

陰虚とは、陰液いんえききょしていること。身体の潤いに必要な水分(陰液)が不足(虚)している、ということです。

「陰」が弱いと、相対的に「陽」が勝ってしまうというのが陰陽理論ですので、

潤いがなく冷やすことができないために、身体の中で「陽」が増えたかのような症状、熱っぽさの症状が出てきます。

手足のほてりの他、口の渇き、舌が赤くなる、寝汗をかく、尿の色が濃いなどです。

このような陰虚による熱(虚熱きょねつまたは陰虚内熱いんきょないねつ)に対しては、滋陰清熱じいんせいねつの効能がある生薬が必要です。

潤して冷ます生薬です。

まさにそれに適した地黄・黄芩・苦参の3種類を配合しているのが、「三物黄芩湯」です。

出典

『金匱要略』(3世紀)

千金三物黄芩湯は婦人草蓐に在りて、自ら発露して風を得、四肢煩熱に苦しむを治す。頭痛する者は小柴胡湯を与う。頭痛まずただ煩する者は此の湯これを主る。(婦人産後病篇)

もともとは産後の発熱、産褥熱で煩する(苦しい)ものに対する方剤です。

構成生薬について

黄芩と苦参清熱薬せいねつやく。炎症の熱を抑える生薬です。

苦参はその名の通りとてもにがい生薬。清熱作用のほかに、止痒作用と殺菌作用があるのが特徴です。

出産後の産道からの細菌感染を想定して配合されているようです。

地黄補血ほけつとともに滋陰じいん(陰を補う)にも優れます。

3つの生薬の中で分量が最も多いのが地黄で、清熱作用を強化するとともに、黄芩や苦参の燥性とのバランスをとっています。

効能・適応症状

三物黄芩湯は次のような症状に応用されることがあります。

  • 手足のほてり
  • 湿疹、皮膚炎、主婦湿疹、掌蹠膿疱症、手足の荒れ、手足の掻痒症
  • 不眠、更年期障害、口内炎、高血圧症
  • トリコモナス膣炎、白鮮症

添付文書上の効能効果

【ツムラ】

手足のほてり

【薬局製剤】

体力中等度又はやや虚弱で、手足のほてりがあるものの次の諸症:
湿疹・皮膚炎、手足のあれ(手足の湿疹・皮膚炎)、不眠

三物黄芩湯のポイント

陰虚による手足のほてりは夜に起こりやすく、不快感をともない、不眠を招きます。

布団から手足を出して寝ているとか、手のひらや足の裏を壁で冷やしながら寝ているとか、足の裏にシップを貼って寝ているとか。

陰虚なので舌は乾燥して小さくなっている傾向があります。

 

清熱薬のみで構成される黄連解毒湯などは、炎症や充血による熱(ほてり、かゆみ)をよく抑えます。

それに対して、三物黄芩湯の場合は、身体に潤いが不足していることで生じている不快な熱症状を潤しながら抑えます。

体内に必要な陰液が不足し、手足の熱感があり、それに伴った、不眠、イライラに、

または痒み、湿疹などに応用されます。

もともとは産後の薬ですが、月経による出血時に起こる場合も同様に用いることができます。

副作用・注意点

胃腸をフォローする生薬は配合されていないシンプルな処方です。

胃もたれや食欲低下などの消化器症状に注意してください。胃腸が弱い人には適していません。

生薬の薬味は寒性ですので、冷えがある方への連用も適しません。

とても苦いです。エキス剤の場合はお湯に溶かさずにそのままの方が飲みやすいかもしれません。

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