漢方で整える養生法|前立腺肥大・過活動膀胱(OAB)・尿路感染症・尿路結石・慢性腎臓病(CKD)
泌尿器系のトラブルは、年齢や体質、生活習慣によって起こりやすくなります。ここでは、漢方的視点をふまえて、尿トラブルに関する代表的な疾患と、その養生の基本をまとめました。
前立腺肥大
生活
- 規則正しい生活と十分な睡眠をこころがける
- 冷えを避ける(特に下半身や腰を温める)
- 膀胱に負担をかける長時間の排尿の我慢は避ける
- 便秘と前立腺肥大症は、お互いに影響を与える関係にあるため、便秘の予防・改善をこころがける(⇒便秘の養生法はこちら)
漢方的視点:「腎虚(特に腎陽虚)」が関係。加齢とともに腎気が衰えることで排尿トラブルが起こると考えます。また、尿道を圧迫する結節(前立腺結節)ができるものは「瘀血」を考慮します。
食事
- 高脂肪食や動物性脂肪を控える(栄養過多に気をつける)
- 辛いもの、アルコールの摂りすぎを控える
- 便秘予防のために、野菜・果物・食物繊維を意識して摂る
過活動膀胱(OAB)・頻尿・尿漏れ
生活
漢方的視点:「腎気不足」や「湿熱による膀胱の失調」が関連します。腎陽を補い、膀胱の働きを安定させる必要があります。また、骨盤底筋の機能低下は中気下陥を考慮します。
食事
- カフェイン・アルコール・香辛料など刺激物は控えめに
- 夜間頻尿の場合は、夕方以降の水分摂取を控える
- 塩分過多に注意(加工食品、漬物)
尿路感染症
生活
漢方的視点:中医学では膀胱炎などの尿路感染症の症状は「淋証」といいます。「湿熱」が下焦に停滞することで炎症が起こると考え、清熱利湿を重視します。ですが、膀胱炎が長引く、または繰り返し膀胱炎になる方は、脾腎の弱りや体質に根本原因があることが多く、体質改善の視点も重要です。気血両虚や陽虚を考慮する必要があります。
食事
- 水分をしっかりとって排尿を促す
- 利尿作用のある食材(きゅうり、すいか、冬瓜など)を取り入れる
- 刺激性の食材(香辛料)、味の濃いもの、脂もの、甘いもの、アルコールを控える
尿路結石
生活
漢方的視点:「腎・膀胱」に湿熱がこもり結石化すると考えます。湿熱の生じる原因として、過食、または脾腎両虚を考慮します。
食事
- シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、チョコレート、紅茶、緑茶など)は控えめに
ほうれん草、たけのこ、ブロッコリーなどは、茹でて調理し、シュウ酸の量を減らす - カルシウムを適量とる(不足すると結石ができやすくなる)
- 動物性たんぱく、塩分や糖分の摂り過ぎに注意
慢性腎臓病(CKD)
生活
漢方的視点:「腎虚」だけでなく「脾虚」なども関係しやすい。また、血瘀や痰飲、湿熱などがみられる。腎を補い、気血水のバランスを整えることが基本です。特に浮腫みやすい体質では「水滞」や「痰飲」を考慮します。
食事
- 塩分・タンパク質の摂取を医師の指導に基づいて管理する
- (重症度に応じて)カリウム・リン・水分の摂取にも注意(加工食品は控えめに)
- 野菜は加熱してカリウムを減らす工夫も
- 極端な食事の制限は抵抗力の低下のおそれもあるので、バランスの良い食事をこころがける
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