【温清飲】の解説~カサカサして痒みがある皮膚疾患の漢方薬~

温清飲(うんせいいん)

温清飲(うんせいいん)の解説

温清飲うんせいいんは、四物湯しもつとう黄連解毒湯おうれんげどくとうを合わせたものです。

温清・・飲の名前で言えば、四物湯が「」、黄連解毒湯が「」を担っています。

四物湯は、血虚証けっきょしょうに用いられる補血剤ほけつざいの基本処方であり、

医療用エキス製剤の適応症には、おもに月経不順など婦人科系の症状が書かれています。

ですが、清熱剤せいねつざいである黄連解毒湯が配合されていますので、

熱を冷ます清熱作用、抗炎症作用を期待しながらも、(四物湯で)適度に潤すこともできるという方剤です。

これにより湿疹や皮膚炎など、皮膚疾患の方にも広く利用されてきています。

とくにカサカサして痒みのある皮膚疾患に用いられる漢方薬です。

構成生薬

当帰・芍薬・川芎・地黄⇒四物湯しもつとう
黄連・黄芩・黄柏・山梔子⇒黄連解毒湯おうれんげどくとう

つまり温清飲は、四物湯と黄連解毒湯を合わせたもの。

これは「温補」と「清熱」の組み合わせであり、

温と清で、温清飲です。

四物湯…「温補」
黄連解毒湯…「清熱」

温めるものと冷ますものを合わせているところが漢方薬の妙です。

急性の炎症(実熱)であれば黄連解毒湯だけで十分であっても、

症状が慢性に経過している場合(虚熱)は、補いながらも炎症は鎮める(清する)ということが必要になってきます。

黄連解毒湯のような清熱剤の欠点は、単独では燥性に傾いてしまい、乾燥しているものには使えないところ。四物湯との併用でその点を補うことができ、長期的な使用が可能になります。

じっさい、柴胡清肝湯さいこせいかんとう荊芥連翹湯けいがいれんぎょうとう竜胆瀉肝湯りゅうたんしゃかんとうのように、体質改善などを目的に使用される漢方薬の中に、この温清飲を基本としているものが多くあります。(漢方一貫堂という流派の解毒証体質に対する基本処方)

効能効果

医療用エキス製剤

皮膚の色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症

薬局製剤

体力中等度で、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎

<効能・効果に関連する注意>
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことです。

適応症の「皮膚の色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症…」という部分も、

  • 皮膚の色つやが悪い⇒血虚⇒四物湯
  • のぼせるもの⇒血熱⇒黄連解毒湯

が対応していることになります。

温清飲のポイントと注意点

温清飲がもともと(中国の明の時代の書物では)、女性の不正性器出血を治す薬として紹介されています。

そのため、婦人科系の症状に使われることもありますが、

現在はどちらかというと、アトピー性皮膚炎のような慢性の皮膚疾患に使われることの方が多いのではないかと思われます。

血虚で、皮膚はカサカサと乾燥し、色つやがわるくなっている(伝統的には「渋紙色しぶがみいろ」と表現される)状態で、痒みや熱感のあるもの等です。

皮膚疾患に対しては当然、男性でも使われます。

水をさばく利水薬が配合されておらず、分泌物が多いものに(単独での使用は)適していません。(分泌物が多いものには消風散しょうふうさんなどが使われます。

胃腸が弱い方は、配合されている地黄や当帰で、下痢、胃もたれなどの胃腸障害を起こすことがあるので注意してください。

出典

『万病回春』(16世紀)

やや久しく虚熱に属するものは、よろしく血を養いて而して火を清くす。
婦人経脈住まらず、あるいは豆汁のごとく、五色あいまじえ、面色痿黄、臍腹刺痛、寒熱往来し、崩漏止まざるものを治す。(血崩門)

温清飲は、血を養いて、火をすずしくします。

豆汁のようなドロッとした経血の混じった帯下、貧血様の顔色、お腹が刺すように痛み、寒と熱が交互にきて、不正出血が止まらないものを治します。

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