【木防已湯】~動悸や息切れ、むくみや排尿困難に用いられる漢方薬~

木防已湯 (もくぼういとう

木防已湯(もくぼういとう)の解説

木防已湯もくぼういとうは、

浮腫などの水の滞りを改善させる防已(ボウイ)を主薬とする利水剤りすいざいのひとつで、

とくに、胸部の水を取り除くのに用いられる漢方薬です。

構成生薬

原典では木防已(モクボウイ)
原典では桂枝(ケイシ)

木防已湯は、胸部に余計な水分が貯留しているとき(胸部の痰飲たんいん)に用いられる漢方薬です。

水代謝を改善する防已と、

桂皮は温めて水を動かすことで、さらに利水のはたらきを高めています。冷やす力がつよい石膏との調和も兼ねています。

肺熱を清する石膏は、咳嗽、喘息、胸苦しいなどの症状を抑えます。またこれも防已との配合で胸水を取り除くはたらきが高まります。

人参には補気によって体力を補う、心下部のつかえをとる、その他、石膏による胃腸障害、防已の作用による脱水など、他の生薬の副作用を防ぐ目的があります。

(心不全などの心疾患に用いられる漢方薬という印象があるかもしれませんが、利水作用がメインで、強心作用としては人参に少しあるくらいです。)

防已と木防已は基原植物が異なる別の生薬です。日本での局方品は防已だけであり、木防已は使われていません。むしろこの方剤で期待されている利水消腫の効能は、防已が適しているとされています。

効能効果

【医療用エキス製剤】
ツムラ
顔色がさえず、咳をともなう呼吸困難があり、心臓下部に緊張圧重感があるものの心臓、あるいは、腎臓にもとづく疾患、浮腫、心臓性喘息
コタロー
みぞおちがつかえて喘鳴を伴う呼吸困難があり、あるいは浮腫があって尿量減少し、口内または咽喉がかわくもの。心内膜炎、心臓弁膜症、心臓性喘息、慢性腎炎、ネフローゼ。
三和
心臓下部がつかえて喘息を伴う呼吸困難があって浮腫、尿量減少、口渇などの傾向あるものの次の諸症
心臓弁膜症、心臓性喘息、慢性腎炎、ネフロ―ゼ

ポイント・注意点

みぞおちがつかえる、呼吸が苦しいなどの胸部の症状、または浮腫と尿量減少というのが使用の目安になります。

適応病名からは、心臓病などの循環器系の疾患で利用されるイメージがあると思います。

ですが、特別な生薬が配合されているわけではなく、動悸、息切れ、むくみ、などの症状に幅広く応用が可能な漢方薬でもあります。

実際には、利尿効果を高めるために他の利水剤と併用されることもあり得ますし、もちろん西洋薬の補助的に使われることもあります。

長期に処方されることがありますが、石膏の配合量が多く、胃腸が弱い方は、胃部不快感、軟便、下痢などの消化器症状に注意しながら使用してください。

いずれにしても、西洋医学的な検査や治療は優先すべきですので、呼吸が苦しい、動悸、息切れがあるときは、きちんと医療機関を受診しておいてください。

出典

『金匱要略』(3世紀)

隔間の支飲、其の人喘満し、心下痞堅,面色黧黒、其の脉沈緊、之を得て数十日、医之を吐下するも愈えざるは、木防已湯之を主る。

虚する者は即ち愈ゆ、実する者は三日にして復た発す、復た与えて愈えざる者は宜しく木防已湯去石膏加茯苓芒硝湯之を主るべし。

胸郭内に水分が停留し、喘鳴(ゼーゼー)や胸満を生じ、心下(みぞおち)がつかえて堅く、顔色がどす黒い(チアノーゼ)、沈んで緊張した脈、これを患ってから数十日、医者が吐かせたり下痢させたりしても改善しなければ、木防已湯が適応になります。

西洋医学的には、心不全で息苦しくなり喘息症状が出ている(心臓性喘息)、あるいは肺水腫を起こしている病態と解釈されています。(この場合、西洋医学でも利尿薬が処方されるように、木防已湯も適応になります。)

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