麻黄湯(まおうとう)の解説
麻黄湯は、つよい悪寒(さむけ)と発熱(高熱)があり、 頭痛がしたり、体のフシブシが痛くなり、咳が出るカゼのひきはじめに使われる漢方薬です。
悪寒や発熱があるけれど「汗をかいていない」人に適します。
構成生薬は、①麻黄②桂皮③杏仁④甘草の4種類。
比較的シンプルな構成で、そのため漢方薬の中でもシャープな効き目をもちます。
インフルエンザに効果がある漢方薬として知られていますが、インフルエンザだったらすべて麻黄湯が適するというわけではありません。
構成生薬とそのはたらき
麻黄湯は4種類の生薬でつくられるシンプルな構成の漢方薬です。
麻黄+桂皮
①麻黄+②桂皮の組み合わせは、葛根湯とも共通します。
それぞれ単独では発汗作用が弱いですが、桂皮と麻黄が合わさることで発汗作用が増強されます。
また温性の桂皮が配合されていることで、もし発汗過多になっても、身体が冷えないようになっています。
麻黄+杏仁
③杏仁も体を温めますが、発汗作用はありません。
しかし、③杏仁+①麻黄の組み合わせで、咳を止める作用が増強されます。
甘草
④甘草は作用の調和にはたらきます。
杏仁の鎮咳作用を補助する、麻黄の作用を緩和、胃腸障害を防ぐ、発汗過多による体力の消耗を防ぐ、など。
効能・適応症状
麻黄湯はカゼの初期以外にも、インフルエンザや気管支炎、また発熱がなくても用いられることがあります。
- 自然発汗のないカゼの初期(寒気・発熱・頭痛・ふしぶしの痛みなど)
- 関節痛、筋肉痛、腰痛を伴うカゼ
- インフルエンザ、全身症状を伴う急性呼吸器感染症
- 強い咳、喘鳴、寒冷時に発症または増悪する気管支喘息
- 鼻水・鼻づまり
- 乳幼児の鼻閉塞(鼻づまり)による哺乳困難
添付文書上の効能効果
医療用エキス製剤
【ツムラ】
悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの次の諸症:
感冒、インフルエンザ(初期のもの)、関節リウマチ、喘息、乳児の鼻閉塞、哺乳困難
【クラシエ】他
風邪のひきはじめで、さむけがして発熱、頭痛があり、身体のふしぶしが痛い場合の次の諸症:
感冒、鼻かぜ
【コタロー】
高熱悪寒があるにもかかわらず、自然の発汗がなく、身体痛、関節痛のあるもの、あるいは咳嗽や喘鳴のあるもの。
感冒、鼻かぜ、乳児鼻づまり、気管支喘息。
薬局製剤
体力充実して、かぜのひきはじめで、さむけがして発熱、頭痛があり、せきが出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの次の諸症:
感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり
使用のポイント
麻黄湯は、葛根湯を使うときよりも熱や咳の症状が強く、筋肉痛・関節痛をともなう場合に使われます。
汗をかかせることで解熱させる方剤です。
体力があり、がっちりしたタイプの方に使われます。
基本的には短期的だけ使い、長期に服用することはありません。
汗が出るまで服用し、汗が出て熱が下がり始めたら、麻黄湯の役目は終わりです。
副作用・注意点
麻黄湯は汗の出やすい虚弱体質な方には使われません。誤った使用をすると、過度に発汗しすぎる恐れがあり、逆に体力を消耗し、熱が下がったとしても、ぐったりと倦怠感が残ります。
カゼの治療においては、発汗により熱が下がった時点で服用を中止して構いません。
麻黄は交感神経系をつよめます。不眠、動悸、血圧上昇、排尿障害などの副作用に注意してください。
特に高齢者や、高血圧、狭心症、心筋梗塞などの循環器系の疾患のある方は気をつけてください。
また胃腸の弱い人は、食欲不振や悪心、下痢などの胃腸障害が起こることがあります。
そういった副作用の観点からいって、例えばカゼやインフルエンザの予防薬として麻黄湯を使用することはおススメできません。
妊娠中の服用も同様です。
出典
『傷寒論』(3世紀)
太陽病、頭痛、発熱、身疼、腰痛、骨節疼痛、悪風、汗無くして喘する者は、麻黄湯之を主る。
傷寒論 太陽病中篇 第35条
太陽と陽明の合病、喘して胸満する者は下すべからず。麻黄湯が宜し。
傷寒論 太陽病中篇 第36条
太陽病、脈浮緊にして汗無く発熱し、身疼痛、八九日解せず、表証仍在るは此れ当に其の汗を発すべし。薬を服し已りて微かに除かれ、其の人煩を発し目瞑す、劇なる者は必ず衄す、衄すれば乃ち解す。然る所以の者は陽気重きが故なり。麻黄湯之を主る。
傷寒論 太陽病中篇 第46条
その他、第52条、第55条、陽明病篇第235条など
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