【桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)】

桂枝加黄耆湯

桂枝加黄耆湯

構成生薬

桂枝加黄耆湯けいしかおうぎとうは、桂枝湯けいしとう黄耆おうぎを加えたものです。

補気薬ほきやく黄耆には、脾気ひきを補うとともに、体表の機能を改善する効果があります。

効能効果

医療用エキス製剤(東洋)

体力が衰えているもののねあせ、あせも

薬局製剤

体力虚弱なものの次の諸症:ねあせ、あせも、湿疹・皮膚炎

虚弱な人の、多汗(上半身)、寝汗、感冒、または湿疹や皮膚炎などで分泌液が多いもの、治りがわるいもの等に応用されています。

ポイント

桂枝加黄耆湯は、表虚証に用いる桂枝湯にさらに気を補う黄耆が加わりますので、

一層の表虚の状態に用いることができます。

体表の皮膚の機能が低下している表虚証に対して、

黄耆は皮膚の締まりを良くして発汗を抑えたり、肉芽の発生を良くする効果があります。

虚弱な人の、皮膚のトラブル、とくに皮膚に水気が多いものに応用されています。

桂枝湯に比べると長期に使用されることがあります。その場合は甘草の副作用(偽アルドステロン症やミオパチー)に注意が必要です。

出典

『金匱要略』(3世紀)

桂枝加黄耆湯は『金匱要略』では、寒湿の黄汗病、もしくは表虚証の黄疸の初期に用いられている方剤です。

黄汗の病、両脛自ら冷え、もし発熱すれば此れ歴節に属す。食しおわりて汗出で、又身常に暮るれば盗汗出ずる者は此れ労気なり。 若し汗出で已り反て発熱する者は久々なれば其の身必ず甲錯し、発熱止まざる者は必ず悪瘡を生ず。
若し身重く汗出で已り、すなわち軽き者は久々なれば必ず身瞤す、瞤すれば即ち胸中痛み、又腰より以上必ず汗出で、下汗無く、腰髖弛痛し、物有りて皮中に在るが如きの状、劇しき者は食すること能わず、身疼重し、煩燥し、小便利さざるは此れを黄汗為り、桂枝加黄耆湯之を主る。(水気病)

訳↓

黄汗病では下肢が冷えますので、
もし熱をもっていれば歴節病に属します。
食後に汗が出て、日暮れには寝汗が出るものは、虚労です。
もし汗が出ているのに発熱が持続する場合は甲錯(かさつき)が生じ、発熱が持続すると悪瘡が生じます。

身重く汗が出れば症状が幾分軽くなる者(=黄汗病)は、
発汗が続けば身体がピクピク震え、胸が痛くなったりします。
上半身にだけ汗が出て、腰が痛み、皮中に何か物があるような感じがします。
症状が進むと食べられなくなり、痛みが重くなり、煩躁し、尿が出なくなります。
この黄色の病は桂枝加黄耆湯で治療します。

黄汗の病の特徴は、浮腫があり、発熱し、汗出て、口渇、脈沈、そして汗が黄色い(汗をかくと着衣が黄色く染まる)というもの。

諸病の黄家は但だ其の小便を利せ、もし脈浮ならば当に汗を以て之を解すべし、桂枝加黄耆湯にて宜しく之を主るべし。(黄疸病)

⇒黄疸の初期でも、発熱悪寒、脈浮、自汗などの表虚証の症状があれば、桂枝加黄耆湯にて治すべき。

現在は↑のような黄汗病などという原典通りの使い方はほとんどされていないように思われます。

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