抑うつ・気分の落ち込みの漢方|肝の疏泄を整えて

気分の落ち込みに漢方で心と体を整える

抑うつ・気分の落ち込みの漢方

「どうしてこんなに気分が晴れないのだろう…」

朝起きるのがつらい。体が鉛のように重く感じる。好きだったことも楽しめない。気分が落ち込んで、やる気がわかない。
そんな状態が続くと、「自分は弱いのでは」と責めてしまったり、「このまま良くならないのでは」と不安になってしまうのは当然のことかもしれません。

でも、心が落ち込むのは“性格”の問題ではなく、体と心のバランスが崩れているサイン。
漢方では、心と体を切り離さずに見ます。
気分の落ち込みもまた「体質の乱れ」として捉え、そこに働きかけていきます。

肝の疏泄(そせつ)と気分の関係

漢方でいう「肝」には、西洋医学でいう肝臓とは別に大切な役割があります。
それが 疏泄(そせつ)機能 と呼ばれる働きで、全身の気(エネルギー)の流れをなめらかにし、感情のリズムを調整しています。

この疏泄がスムーズに働いていると、ストレスがあっても気持ちを切り替えることができ、胸のあたりも軽く、感情は自然に安定しています。
しかし疏泄が滞ると、胸や喉に詰まる感じがしたり、理由のはっきりしない不安や落ち込み、ため息が増えたり、気持ちがふさぎ込んでしまうのです。

それらは肝鬱気滞と呼ばれる状態のサインです。滞りが熱を帯びると焦りやほてりが強まり、考えがまとまらなくなることもあります。さらに長引けば、気血を生み出す力が消耗し、心を養う血(心血)が不足して、無力感や不眠、健忘が目立つようになります。

 実証から虚証

気分の落ち込みは、多くの方で、最初はストレスで肝の疏泄が滞る 実証タイプ として始まることが多いです。
つよいストレスに直面しているとき。
胸のつかえ、イライラ、喉の詰まり、ざわつき。
ここでは、滞りを解き、余分な熱をさまし、呼吸と気の流れを取り戻すことが要になります。

そして、その状態が長く続くと、気や血を生み出す力が消耗してしまいます。
すると、今度は「足りない」ことが原因となる 虚証タイプ が多くなっきます。
「気力が湧かない」「考えがまとまらない」「疲れているのに眠れない」。
心を支える血や、体の土台である腎の力が消耗し、心血虚・心脾両虚・腎虚といった状態が出てきます。
いつもなら気にしないことにも敏感に反応してしまい落ち込んでしまうようになります。
この段階では、足りないものを時間をかけて補い、からだの内側から回復力を育てることが大切です。

だからこそ、今の状態をしっかりと見極めて対応していくことが大切になります。漢方は症状だけでなく、その人の体質や経過に応じて原因を探り、整えていきます。

漢方薬の一例

漢方薬はあくまで「体質に合わせて選ぶ」ものですが、代表的な処方をご紹介します。

ストレスで胸がつかえるときには 半夏厚朴湯、イライラや不安が強いときには柴胡加竜骨牡蛎湯
女性の更年期や自律神経の乱れが関わる場合は加味逍遙散
神経が高ぶりやすく怒りっぽい人には 抑肝散 がよく用いられます。

長引いた抑うつでは、血や気を補う 帰脾湯 が有効なことがありますし、痰や熱を伴う場合には 竹筎温胆湯 が適することもあります。

どれも「気分の落ち込み」そのものを直接改善するというより、原因となっている体質を整えることで気分が回復していくのが特徴です。

養生の工夫

薬と同じくらい大切なのが、毎日の養生です。
朝の光を浴びることは体内時計を整え、肝の疏泄のリズムを取り戻す助けになります。
軽い散歩や深呼吸は滞った気を巡らせ、気分の沈みを和らげてくれます。

食事では、ナツメや小豆、黒ごまやクコの実など、心血を養う食材を少しずつ取り入れてみましょう。
そして何より大切なのは、「一人で抱え込まず、気持ちを吐き出すこと」。
短い言葉でも構いません。うまく話せなくても大丈夫。
感情を出すことそのものが、気の巡りを整える手助けになります。

まとめ

雲の向こうには、必ず光があります

抑うつや気分の落ち込みは、決して珍しいことではありません。
漢方では、肝の疏泄が滞るところから始まり、長引けば心や脾、腎にまで影響が広がると考えます。
初期には「気の流れをほどくこと」、慢性期には「不足を補うこと」が大切になります。

「もうずっと気持ちが重たい…」
「このまま良くならないのではと不安…」

そんな思いを抱えている方にこそ、漢方の視点は寄り添えるはずです。
体質を整えながら、少しずつ気持ちを軽くしていく──その道を一緒に歩んでいきましょう。

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