漢方は食前?食後?迷ったときの正解|飲み方の基本と例外

飲み薬と水

漢方薬の飲み方|食前が基本?食後でもいい?症状別に考えるコツ

「漢方薬は食前(または食間)が基本。飲み忘れたら食後でも可」──よく見かける回答です。

ただ、薬の服用タイミングは本来、処方内容・症状・体質・併用薬・生活リズムで最適な飲み方が変わります。それは西洋薬でも漢方薬でも同じです。

ここでは「食前が良い」と言われる理由を整理しつつ、結局どう飲めばよいのか、現実的な話をまとめます。

基本の飲み方

  • 基本:続けて飲む漢方薬は「食前・食間」を目安に
  • ただし:胃がムカムカする/胃もたれするなら「食後」の方が良い場合もある
  • 頓服:葛根湯や芍薬甘草湯など“今すぐ服用”が大事なシーンは、食事に合わせず必要時に
  • 飲み忘れ:気づいた時点で飲めるなら飲む(次の服用が近いなら1回飛ばす等、状況で判断)

無理なく継続できて、効果も出やすい飲み方が理想です。

結論|最適解は状況で変わる

漢方薬の飲み方に関して、「基本は食前または食間が良い、しかし飲み忘れた時は食後でも可」は確かに基本です。

ですが、例えば漢方薬以外の薬で、
「薬はいつ服用するのがいいですか?」「飲み忘れたときはどうすればいいですか?」と言われたときに、
「基本食後で、飲み忘れたときは思い出したときに」などと即答して大丈夫ですか?

その薬が、風邪薬か、血圧の薬か、糖尿の薬か、血液サラサラの薬か、入眠剤かなどによって回答が変わってきます。
きちんとその薬剤が何なのか確認しなければ、回答できません。

漢方薬も同じです。
「漢方薬なので食前か食間です」ではなくて、
「あなたのこの症状に対して処方されているこの漢方薬をあなたが服用する場合はこういう飲み方が良いですよ」という回答があるはずです。

ルールとしての食前・食間

市販の漢方薬のパッケージに記載されている用法、
それから病院で処方される保険適用の漢方薬も、通常、食前か食間です。
なぜかというと食前または食間の用法でしか承認されていないからです。
販売や保険のルール上、そう処方しなければいけなくなっています。
薬局薬剤師が、もし漢方薬の「食後」指示があったとしても、それをそのまま見逃しておくと、処方監査ができていないと見なされて、厚生局から注意や指導を受けてしまうことがあります。
ルールはルールとして守らなければいけませんので、実際にどのように服用するかとは別の問題として、形式上、食前または食間で処理する必要があります。

というのを、まず前提として知っておいてください。

なぜ漢方薬は食前(空腹時)が良いと言われるのか(よくある3つの理由)

一般的に挙げられる理由は次の3つです。

  1. 空腹時の方が「吸収が良い」
  2. 腸内細菌が配糖体を分解するため
  3. 麻黄・附子などアルカロイドの副作用を回避できる

ただし、これらは説明として便利な一方で、そのまま理解すると誤解も生みます。順に整理します。

「吸収が良い」は何を意味する?

まず「吸収が良い」という言葉だけでは、少なくとも2通りの意味がとれます。

一つは「吸収される率が高い」ということ
もう一つは「吸収されるスピードが速い」ということ

例えば血糖値を気にされている方は「ご飯より先に野菜を食べた方がいい」と聞いたことがあるかもしれません。
胃に野菜があることで、炭水化物の消化吸収に時間がかかり、血糖値の上昇が穏やかになるためです。
同じように食後に漢方薬を服用すると、吸収される順番は食べ物と漢方薬との競争になるので、漢方薬の吸収のスピードが穏やかになる、ということです。

この時、食べる順番は、吸収されるスピードが速やかか穏やかかに影響するものであって、吸収率の問題とは別です。
デザートを食前じゃなくて食後に食べたからといって、デザートの摂取カロリーが抑えられるわけではないように、
漢方薬の吸収の速度が穏やかだからというだけで、漢方薬の効き目が弱まるということは言えません。

そして、

もし速やかに吸収させて早く効かせたい状況であるのならば、食前ではなくて、頓服にすべきです。
葛根湯はゾクッと寒気がしたときに服用すれば良いし、芍薬甘草湯は足がつった時に服用すれば良いのであり、わざわざ食事のタイミングに合わせる必要はありません。

腸内細菌と配糖体の話は“根拠の一部”

簡単に書きますと、
漢方薬の成分の中に、配糖体といわれる形のものがあります。
この成分はそのままでは吸収されづらいものです。
ですが腸内細菌がこの配糖体を分解して、吸収しやすい形に変えてくれています。
食後だと、食べ物がこの腸内細菌による配糖体の分解過程をジャマをしてしまう、ということです。

しかしながら、

この説明は、配糖体の吸収過程のひとつとして腸内細菌も関与している部分がある、というだけのことです。
腸内細菌が配糖体を分解するのが事実だとしても、配糖体にも様々ありますし、その様々ある吸収経路の中のひとつです。
配糖体の吸収のすべてを腸内細菌ばかりに頼っているわけではありません。

よって食事が腸内細菌の働きに影響するからといって、漢方薬の効果が弱くなるという十分な理由にはなりません。

また漢方薬というのは、多くの成分が関与して総合的に効いているものだと考えれば、
ある特定成分の一経路だけで、漢方薬全体の効果を一律に説明するのは難しい、という点は押さえておく必要があります。

麻黄・附子などアルカロイドと「食前なら安全」の誤解

確かに植物に含まれるアルカロイドは毒性が高いものがあります。
モルヒネ、コカイン、トリカブトのアコニチン等と書けば危険な感じがします。
しかし、そのような毒性があって危険な成分が漢方薬に混入していれば、それ自体がまず大問題になっています。
なのでここでは、麻黄のエフェドリンや、附子のアコニチンのことです。
アルカロイドの吸収は胃内pHの影響を受け、
食後では、胃内pHが高い方がアルカロイドは吸収されやすくなります。
だから逆に空腹時の方が副作用の発現を抑えられる、と考えることができます。

そこで注意していただきたいのですが、
エフェドリンやアコニチンの副作用が出ては困るような人が
麻黄や附子が配合された漢方薬を服用していいのでしょうか。
食前とか食後とかいう前に、麻黄や附子が適さない人には、麻黄や附子はなるべく使うべきではなく、
「食後だと副作用のおそれがあるけれど、食前だったら安全です」という保証はできません。

それから、胃内pHが影響するという話をし始めると、
年齢などで胃酸の量が変わるのでそもそものpHは?
胃薬として制酸薬を服用する場合には?
そして、牡蛎のように胃酸を中和する作用のある生薬が配合されてる漢方薬を併用する場合には?
というように多くの条件が絡みます。

よって“食前なら副作用を回避できる”という説明で結論づけるのは難しいでしょう。

西洋薬はなぜ食後が多いのか(吸収より“飲み忘れ防止”?)

西洋薬は、作用が強いから胃を荒らす(→だから食後が良い)
漢方薬は、穏やかに作用するものだから胃にも優しい(→だから空腹時でも可)

というのは、薬に対しての全く勝手なイメージです。
胃に障るかどうかは西洋薬か漢方薬かで判断できるものではありません。

西洋医学の薬に関していえば、
単成分なので非常に分かりやすく、食事による影響(血中濃度)がきちんと調べられていて、
食事の影響を受けて吸収が落ちるものもあれば、逆に食後の方が吸収が良いものもあるし、また食事の影響は考慮しなくてもいい薬も多い。
例えば降圧剤や高脂血症の薬は、1日1回いつ飲んでもいい薬がほとんどなのに、病院で処方される場合は、食後(特に朝食後)の指示がほとんど。
さらに空腹時に比べ食後の方が吸収率が低下しているデータが出ているのに、食後で処方されている薬だってあります。
その場合の食後の理由は、食後に服用する習慣を作って飲み忘れを少なくすることが大きな目的だと考えられます。
飲み忘れることがあるかもしれないということを考慮して、西洋薬が基本食後にしているように、
漢方薬もそれにならって、「飲み忘れたら食後でも可」とするよりも、「基本食後」にしてしまった方がよい結果につながるかもしれません。

また実際に、漢方薬も空腹時に服用すると胃もたれを起こす場合があって、そのときは食後の方が服用を継続してもらいやすいです。

さらに、
食欲がないから漢方薬を試したいという人や、吐き気がして食べられないから漢方薬を飲むという人には、食前や食後の説明はほとんど意味を持たず、ご自身が服用できそうだと思ったときに、服用できそうな量を、少しずつ服用すればいいでしょう。

併用薬があるときの注意(抗菌薬×カルシウム等)

知られている相互作用は限られていますが、

抗菌薬の中で、
例えばテトラサイクリン系やニューキノロン系のものは、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄などを含有する製剤と併用注意となっているのもがあります。
抗菌薬とこれらが結合してしまい、吸収されづらくなり、抗菌薬の方の効果が減弱するおそれがあるからです。
一方、漢方薬には石膏、竜骨、牡蛎などはカルシウムを含みますので、
そういう抗菌薬を服用するときに限って、そういう生薬が配合される漢方薬については、1~2時間の間隔をおいて服用する等の注意が必要と思われます。

その他の、西洋薬と漢方薬の相互作用があるとすれば、
胃の中で起こる問題ではなくて、多くは効能そのものの問題なので
時間をずらせば回避できるというものではありません。

食前/食後より大事なこと

食前か食後か以上に重要なのは、その処方が合っているか、そして継続できているかです。

真剣に漢方薬で症状を改善させたいという思いで服用している人は、
食前だろうが食後だろうが漢方薬をしっかり指示された通り服用されるし、生活習慣を改善する努力もされるでしょう。
もし頻繁に飲み忘れていて、体調に大した変化もないのであれば、
「飲み忘れた時は食後でも可」というより「飲み忘れるくらいなら飲まなくても可」という判断も必要です。
(その方が医療費の節約になります。)
しばらく服用を続けなければ効果を判断できないということもありますが、
効いているのかどうか分からないまま漫然と処方が続けられている例もあります。
食前か食後でどちらが効果的かというタイミングの微調整よりも、薬が合っているのかどうか処方や方針の見直し(必要性の再評価)の方が大事です。

まとめ

漢方薬は医薬品ですので、承認されている用法用量の通り使用するというのが、原則です。
だから食前や食間の指示されるのが一般的です。
では、実際のところ漢方薬はいつ服用するのがいいのか?という質問に対しては、
症状や、処方されている漢方薬の内容、併用薬、その人の生活のリズムに応じて
臨機応変に、個別に対応して良いと思います。

ご自身の漢方薬の服用方法について確認したいことがあれば、お気軽にご相談ください。

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