漢方薬エキス製剤(顆粒・細粒)の服用方法
処方された漢方薬をお渡しするときに、(大人の方でも)「漢方薬は苦手なんです。他にないですか?」と言われることは時々あります。
こちらとしてはなるべくその漢方薬を飲んで頂きたいところですので、
漢方薬を飲みやすくする工夫について、まとめておきます。
あくまでも工夫ですから、実際に役立つもの役立たないものがあるかと思いますが、
少しでも参考にしていただいて、ご自身でも工夫されてみてください。
お湯に溶かさなくてもOK
「漢方薬はお湯に溶いて服用するよう」に指導されたとしても、味や匂いがダメで服用できなければ意味がありません。
慣れるまではエキス剤をそのまま粉薬として服用してください。
お湯に溶いて服用しなければ、効果が十分発揮されないということも考えられますが、飲めないのなら仕方ないです。
以下、まずは、エキス剤の顆粒や細粒をそのまま服用することを前提にしています。
先に、口の中に水をためておく
一般的な飲み方では、
漢方薬を先に口に入れておいて、そして水を含んで流し込む。でも顆粒が口に残ってしまうので、さらに水を飲んで歯茎のあたりの顆粒をグチュグチュとかき集めながら飲み込んだりして、わずらわしいものです。
ですので、漢方薬の場合は、「水が先」がおススメです。
口の中に、ごくっと1回で飲み込める程度の(できればちょっとだけ多めの量の)水を含む。
そのまま顔を上に向けて口を開き、溜めた水の上に漢方薬を落とす。
水に落ちた漢方薬がしばらくすれば沈んできます。
水と漢方薬が馴染んできたくらいのタイミングで、口を閉じ、顔を下ろしながら、水を一口で飲み込みます。
(誤嚥防止のため飲み込むときは顔を下ろしてください)
漢方薬を投入した直後に少し匂いを感じたり、飲み込むタイミングによっては一瞬味を感じることもあります。
慣れるまで練習が必要かもしれませんが、コツをつかめば一口で飲めてしまうのでかなりラクです。
漢方薬を先に入れるのと順番が違うだけで大きな違いです。
ただし、小さなお子さんや高齢の方では難しいかもしれませんので無理しないでください。
オブラートで包む
少し手間になりますが、定番の方法は、やはりオブラートです。
オブラートに漢方薬を入れて、しっかり包む。(袋タイプのオブラートが便利です)
それを少量の水の入ったコップに入れる。
10秒くらいでオブラートがゼリー状になるので、そのタイミングで水とともにツルンと服用します。
漢方薬の場合は服用量が多いので、一度に飲み込めなさそうなときは、数回に分けてください。
カプセルに詰める
薬の服用のためのカプセルも市販されています。
そのカプセルに(手間ですがご自身で)詰めて頂いて服用すれば、味も匂いもありません。
ただし、
漢方薬の1包の重さ2.5gのものでも、カサとしてはおそらく4~5mlくらいになります。
大きめのカプセルを使用したとしても一回で少なくともカプセルを5~6個前後は服用しなければいけません。
Amazonのレビューにもありましたが、カプセルに漢方薬を詰める作業と服用の量を考えると確かにコスパは良くありません。
もし1つのカプセルに1回分の漢方薬をギュッと詰めることができるのであれば、きっとすでに漢方メーカーがカプセル製剤をたくさん作ってるはずですよね。
漢方薬はマズイという先入観をもたないこと
すべての生薬がただ苦いわけでなく、甘いもの辛いもの酸っぱいものに無味のもの、様々な味が混ざっていています。
漢方薬は苦いから飲めないなどという思い込みは一度捨ててみてください。
漢方薬の味の感じ方は人によって違っているということもあります。
漢方薬の種類によっては(人からは苦いと聞いていたものでも)意外と平気で飲めたりするかもしれませんよ。
治したいという熱意をもつ
飲みやすい味の漢方薬もありますが、(先入観を捨てたとしても)残念ながらマズイ漢方薬はマズイです。
でも漢方薬は薬です。美味しく飲んでもらうために作られているわけありません。
「不味くても当然。その不味い成分のおかげで効いてくれるのです。
本当に治りたいと思っているのなら頑張って服用できるはず。
まわりのみんなもあなたの体調がはやく良くなることを願っています。
美味しいものは、体調が良くなったら食べればいいじゃないですか。」
という熱意が持てれば最強です。
飲み物や食べ物に混ぜる
例えばヨーグルト、リンゴジュース、アイスクリーム、ジャム、ココア、練乳、ハチミツ(1歳以上)とか。
甘いものが苦手なら、例えばマヨネーズ、お好み焼きソース、味噌汁、スープ、カレー粉とか。
組み合わせによっては混ぜたとしても漢方薬の味の方が勝ってしまう場合もありますが、ある程度は味を隠すことができます。
『フローチャートこども漢方薬-びっくり・おいしい飲ませ方』では、お勧めの組み合わせであったり、その他にもクッキーやパンケーキ、ハンバーグなどにする方法も紹介されていますので、興味のある方はお読みください。

特にその中で、我が家で定番になっているのが「小青竜湯+マヨネーズ」。
小青竜湯は苦味よりもスッパイ味がする漢方薬です。
小青竜湯の強めの酸味が、マヨネーズのお酢の味に隠れて感じなくなります。
混ぜると見た目はほんとに粒マスタード風になります。
子供でもぺろっと食べてしまいます。
効き目に影響しないのかと心配になる方もいるかもしれませんが、うちはしっかり効いている印象はあります。
極少量の水を加えてペースト状にする、もしくは、シロップのようなもので練って団子にする、などの方法もあります。
こどもに粉薬(西洋薬)を飲ませるときの方法として知られているものですが、漢方薬でもできます。
ただ、漢方薬の場合は、見た目が色的に悪くてどうしても美味しそうにはならないですね…
誰かと一緒に服用する
漢方では「母子同服」という言葉があります。
夜泣き・疳の虫が激しい子供に漢方薬を用いるときに、その母親にも(イライラなどがあるので)同様の漢方薬を一緒に服用してもらうことです。
もちろん漢方薬を服用するのは症状を改善させるためなのですが、特に子供にとっては、自分だけじゃなく一緒に服用してくれるということ自体にも安心感をもたらす効果があると思われます。
で、この効果を応用して、
親子にかぎらず、兄弟、夫婦、友達とか、服用する漢方薬は違ったとしても、一緒に服用する仲間意識というか連帯感でもって、苦手な漢方薬の服用も克服できるかもしれません。
留意点
飲み方は一応なんでもかんでも良いというわけでもありませんので、まとめとして留意点も書いておきます。
指示された用法通り服用するべきときもあります
特殊な使い方(漢方薬でうがいをする等)を指示されている場合は、
その用法をすることによって効果が表れるという意図があるので、その通り使用してください。
扁桃腺での桔梗湯、
口内炎での半夏瀉心湯、
歯痛での立効散、など。
大建中湯+炭酸水でジンジャーエール?
大建中湯には乾姜(生姜を加工したもの)と膠飴(水アメ)が入っているので、炭酸水に混ぜるとジンジャーエール風になって美味しい、という話を聞いたことがあります。
味の話だけをすればそうかもしれません。
ただし、
大建中湯は、お腹が冷えていて痛いときに処方されます。また腹部膨満感に処方されます。
そこで、お腹の冷えている人に冷たい飲み物でいいのか、
腹部膨満のある人に炭酸はいいのか、という問題を考えなければいけません。
それでも一度は試しに作って服用してみました。
実際は、大建中湯には山椒も入っているため、味わうと口の中に(しびれるような)辛さが残ります。
一口目は確かにジンジャーエール風の甘さでも、後味の辛みは消えませんでした。
で結局、水を飲みたくなるので、最初から水で流し込む飲み方が無難じゃないかと思いました。(個人の感想です)
本来は、お湯に溶いて服用した方がよく効きます。自分の経験からも、お腹を冷やしてしまったときに服用するなら断然、白湯で服用することをお勧めします。
・・・というようなことで、良い例、そうでもない例、(精神論的なものも含め)いろいろな服用方法がありますが、
毎日の漢方薬の服用が苦にならないように、
ご自身が飲まれている漢方薬と相性の良い方法を、各々工夫されてみてはいかがでしょうか。
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