『傷寒論』第2条
『傷寒論』の第2条は、中風についてです。
「中風」という言葉は、
脳卒中、または半身不随や言語障害など脳卒中による後遺症のことを指して使うことも多いですけど
しかし、『傷寒論』の中風は、それとは別の内容になります。
急に発症する症状、という点では一致していますが。
では、第2条です。
第2条
読み方⇒太陽の病、発熱し、汗出でて、悪風し、脈緩なる者は、名づけて中風と為す。
意味⇒太陽病で、発熱、発汗、悪風があって、脈が緩である者は、中風である。
中風というものの説明になります。
次の第3条には「傷寒」が出てきますが、
第2条の「中風」の説明と、第3条の「傷寒」の説明が似た書き方で続いており、
まず、「太陽病」をその症状によって、「中風」と「傷寒」の2つ分けています。
(実際には、その中間の症状もあり、きっちり線引きするのは難しい場合もあると思います。)
太陽病で…
第1条で、「太陽病とは・・・」というのを説明しておいて、
第2条で、「その太陽病で、」ということなので、
第1条に書いてあった太陽病の症状、
脈が浮、頭~項の痛み、悪寒といった症状があって、さらに・・・という流れです。
発熱
体温が平熱より何度上がれば発熱か?などと考える必要はありません。
体温計が発明されるよりずっと古くに書かれているからです。
自覚的、または他覚的に、熱っぽい感じがあれば発熱です。
汗出で悪風
発汗は、ダラダラと滴が垂れるような汗ではなく、
皮膚の表面がじっとりと汗ばんでいるようなものです。
悪寒といえば、ゾクゾクッと身を縮こませてしまうような、じっとしていても感じるもので、
悪風は、そこまではなく、風(冷気)にあたった時に嫌な感じがするようなさむけです。
汗が出ていれば、汗腺は開いていて、皮膚は湿っていますので、風にあたれば悪風を感じやすい状態です。
脈が緩
太陽病であれば、「脈は浮」でしたので、
浮いていて、そして緩やかな脈ということになります。
手首の浅いところで脈には触れるけれども、血管が弛緩しているような勢いのないゆったりとした脈です。
これも「傷寒」とは対照的なところです。
中風と為す
以上のような症状のあるものを、「中風」とよびます。
風(かぜ)に中(あた)ったことによる病気という意味です。
第3条の「傷寒」にくらべると、「中風」は症状が軽いものであり、
おそらく誰もがかかったことのある、一般的な「感冒」(急性熱性疾患)はこちらに相当すると考えられます。
後に出てきますが、代表的な方剤でいえば、「桂枝湯」(けいしとう)が使われる症状の一つになります。
<追記>
中風は、この時点では一般的な感冒の症状ですが、すべてが桂枝湯で治ってしまうもの(軽症)ばかりではありません。予後不良の症状へと発展する中風もあるかも・・・
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