立効散(りっこうさん)の解説
立効散はおもに、虫歯による歯の痛み、抜歯後の痛み、歯肉炎など、
歯科系の痛みに対して使われている漢方薬です。
医療用の立効散は、歯医者さんで処方されることもあります。
逆に、歯の痛み以外での使用はあまり見かけないかもしれません。
立効散の「立」が、すぐさま・たちまち・直ちに・即座に、というような意味合いなので、
「立効散」=「すぐに効く薬」というとても分かりやすいネーミングがされています。
効き目に立直(リーチ)!という感じ。
鎮痛剤としての即効性を期待して使います。
歯の痛みの緊急時に、医療用エキス製剤ではツムラの110番といえば、「立効散」です。
基本は頓服で使用。ただし、口に含んですぐに飲み込むような、普通な服用ではいけません。
すぐに効かせるためには、ゆっくりと服用する必要があります。
効能・適応症状
- 歯痛、抜歯後の疼痛
- 歯齦(歯ぐき)の痛み、歯肉炎、歯茎の出血
- 舌痛症、舌咽神経痛など
- そのほか口腔内の腫脹・疼痛に幅広く使用されます
- 頭痛、片頭痛などに応用されることもあります
添付文書上の効能効果
【ツムラ】
抜歯後の疼痛、歯痛
構成生薬のはたらき
立効散は、5種類の生薬で構成されています。
細辛・防風・升麻・竜胆はどれも鎮痛作用があります。
なかでも細辛は鎮痛効果のつよい生薬です。
竜胆・甘草は、消炎のはたらきがあります。
つまりすべて、消炎鎮痛を目的とした生薬構成です。
細辛・防風・升麻などは、歯の痛みに限らず、頭の痛みにも用いられる生薬です。
生薬の寒熱の性質をみると、
防風→微温性
甘草→平
升麻→微寒性
竜胆→寒性
でうまくバランスがとれており、寒熱の体質によらず使えます。
中医学的には、
歯ぐきや前頭部には陽明経の経絡が巡っているので、竜胆や細辛が陽明経の経絡の気の流れを改善して痛みが起こらなくなる、と説明することもできるようです。
立効散の飲み方
用法及び用量に関連する使用上の注意として、以下のような指示が書かれています。
本剤は口にふくんでゆっくり服用すること
生薬の細辛を直接かじったことのある人には分かると思いますが、
例えば山椒が効いた本格的な麻婆豆腐を食べたあとのような、口の中がピリピリとマヒした感覚がしばらく残ります。
升麻・竜胆も苦い味で、感覚を鈍らせます。
つまり、
立効散には消炎鎮痛作用があるわけですが、
口の中の、局所麻酔的な効果も期待できる配合になっているのです。
特に口の中の痛みに対して使うのであれば、すぐに飲み込んでしまってはいけません。
お湯に溶かしたものを熱いまま口に入れると、熱さで痛みが増すおそれがあります。
人肌くらいまで冷ましたものを少しずつ服用してください。
エキス顆粒の場合は、そこまで強烈に口内がシビレることはありません。直接口にいれて、そのままにしておくのも良いかと思います。
注意点
気や血を補ったり、体質を改善したりするものではありません。
基本は、鎮痛剤として、頓服で用います。(一般的なロキソニンのような痛み止めとの併用は可能です)
立効散の効果はあくまでも対症療法です。これで虫歯などが治るわけでもありません。
歯の痛みは根本的な治療が必要です。
とりあえず、きちんと歯医者さんには通いましょう。
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