柴陥湯(さいかんとう)の解説
柴陥湯は、小柴胡湯と小陥胸湯を合わせたものです。
構成生薬
柴陥湯=小柴胡湯+小陥胸湯です。
小陥胸湯=黄連・栝楼仁・半夏であって、半夏が小柴胡湯と重複しています。
よって柴陥湯は、小柴胡湯に黄連と栝楼仁を加えたものになります。
小陥胸湯については↓に書きます。
効能効果
医療用エキス製剤
【ツムラ】咳、咳による胸痛
【コタロー】胸痛や背痛、あるいは胸水があって、胸元もしくは胃部がつかえ、尿量減少するもの、あるいは咳嗽して、粘稠な喀痰を排泄するもの。気管支炎、気管支喘息、肋膜炎の胸痛
薬局製剤
体力中等度以上で、ときに脇腹(腹)からみぞおちにかけて苦しく、食欲不振で口が苦く、舌に白苔がつき、強いせきが出てたんが切れにくく、ときに胸痛があるものの次の諸症:せき、胸痛、気管支炎
ポイント
小柴胡湯にさらに消炎鎮痛の効果を増したものと考えられます。
胸部の炎症、咳がひどい、痰がきれにくい、咳をしたときや深い呼吸をしたときに胸が痛む、など。
もしくは咳がなくても、胸部、背中の痛みがあれば用いられることがあります。
基本的には小柴胡湯に準じます。
出典
『医学入門』(16世紀)
小柴胡湯・小陥胸湯は『傷寒論』(3世紀)の方剤
小陥胸湯について
まず、漢方薬で「小〇〇湯」があればだいたい「大〇〇湯」がありまして、
小陥胸湯があれば大陥胸湯もあります。
どちらも熱邪と痰飲が胸部で結びついたことによる結胸証(実熱証)のときの方剤ですが、
結胸証を、症状の重さや症状の起こっている範囲で簡単に言ってしまうと、重症が大結胸、それよりも軽症なのを小結胸と分けます。
そして、大結胸証に用いるのが大陥胸湯、小結胸証に用いるのが小陥胸湯ということです。
大陥胸湯は、大黄、芒硝、甘遂。すべて寒性で、清熱・瀉熱・瀉水の強力な構成です。
臨床症状としては気管支炎、肺炎、胸膜炎、肺水腫などに適応しますが、
甘遂は非常に作用の激しい生薬で、現在の日本ではおそらく使われていません。
それに比べると小陥胸湯の黄連・栝楼仁・半夏の作用は緩和になっています。
※小陥胸湯の原典では「栝楼仁」ではなく「栝楼実」です。(栝楼仁→種子、栝楼実→果実全体)
小結胸の病は、正に心下に在りて、之を按ずれば即ち痛み、脈浮滑なる者は、小陥胸湯之を主る。
(『傷寒論』太陽病篇)
小結胸は、患部が心下(心窩部)に限定されていて、触ってみたときに痛みがあります。
結胸証ですので、黄連の寒性で清熱、半夏で痰飲を除去します(半夏は温性)。
栝楼実は心下の痛みをとる作用に優れるとされています。
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