イライラすると、甘いものやお菓子に手が伸びる。
お腹が空いているわけではないのに、つい食べてしまう。
食べたあとに後悔するのに、また同じことを繰り返してしまう。
こうした「ストレス食い」に悩んでいる方は少なくありません。
しかも本人としては、「食べないほうがいい」と分かっていることが多いため、あとから自己嫌悪も強くなりやすいものです。
ですが、ストレス食いは単なる意志の弱さだけで説明できるものではありません。
ストレスは自律神経に影響し、さらに食欲に関わるホルモンにも影響します。食欲調節にはグレリンやレプチンなどが関わっており、ストレス時にはコルチゾールも食行動に影響します。睡眠不足が重なると、食欲はますます不安定になりやすく、甘いものや高カロリーなものを欲しやすくなります。
漢方では、こうした状態を単に「食欲が増す」と見るのではなく、ストレスによる気の巡りの乱れや、そこから起こる胃腸の不調、便通の乱れ、熱のこもりなども含めて考えます。
この記事では、イライラすると食べてしまう背景を整理しながら、ストレス食いを漢方ではどう考えるのか、そして大柴胡湯がなぜよく話題になるのかを解説します。
イライラすると食べてしまうのはなぜ?
ストレス食いというと、ただ食べすぎているだけに見えるかもしれません。
ですが実際には、「空腹だから食べる」というより、気分を落ち着かせるために食べていることがあります。
イライラしたときや不安が強いとき、人は何かで気持ちを切り替えたくなります。
そのとき、手軽に反応しやすいのが食べる行動です。特に甘いものやスナックのように、刺激が分かりやすく、すぐ満足感を得やすいものに偏りやすくなります。
一時的には落ち着いたように感じても、根本のストレスが解決しているわけではないため、また繰り返しやすくなります。
こうした流れには、ストレスによるホルモンの変化も関係しています。
ストレス時にはコルチゾールが食欲や報酬行動に関わり、さらに食欲調節にはグレリンやレプチンが関与します。睡眠不足はこれらのバランスを乱しやすく、食欲が不安定になりやすいことも知られています。
また、ストレス食いでは食欲の関係で体重が変化するだけとは限りません。
お腹の張り、げっぷ、胃もたれ、便秘や下痢など、胃腸の不調を伴うこともあります。
ストレス食いは「自己管理ができていない」「我慢が足りない」といった話だけではありません。
ストレス、自律神経、睡眠、ホルモン、胃腸の働きが重なって起こっていることがあるため、意志の弱さだけで済ませられるものではないでしょう。
漢方ではストレス食いをどう考える?
気滞
漢方では、イライラすると食べてしまう状態をみたとき、まず気滞を考えます。
気滞とは、ストレスなどによって気の巡りが滞った状態です。
気の巡りが悪くなると、気分が晴れない、ため息が多い、胸や脇が張る、喉がつかえるといった形で現れやすくなります。
この気滞は胃腸にも影響します。食欲のコントロールが崩れたり、食べたものがもたれたり、便通が乱れたりします。
食欲が強くなることもあれば、逆に胃がつかえて食べられないこともあり、同じストレスの中でも症状の出方は一様ではありません。
さらに、ストレス食いの中には、単なる気滞だけでなく、熱っぽさを伴うものもあります。
イライラが強い、ほてる、口が苦い、便秘しやすい、脇腹からみぞおちにかけて張る、といった状態です。
こうしたタイプでは、気滞が長引いて、胃腸に熱をこもらせています。
理気の食養生・養生法
こうしたときは、ただ食べないように我慢するより、気の巡りを整える方向(理気)で考えます。
食事の時間を不規則にしない、早食いにならない、甘いものだけで済ませない、といったことももちろん大切ですが、
食養生では香りのよい食材を取り入れるといったことも有効です。
例えば、紫蘇、三つ葉、春菊、みょうが、セロリ、柑橘類などの香りを。
強く効かせるというより、詰まった気分を少し動かすイメージです。
食事だけでなく、気滞には日常の過ごし方も関係します。
呼吸が浅くなってたり、
食べる直前までスマホをしていたり、
仕事の緊張した気分のまま急いで食事をしたり、
気分転換が「食べること」だけになっていたり、
こうした点も見直す余地があります。
軽い散歩、胸や脇をひらくようなストレッチ、入浴、香りで気分を切り替えることなども、理気の養生として役立ちます。
つまり、ストレス食いを漢方で考えるときは、
食欲を抑えようというより、気の巡りが滞りにくい生活に戻していくという考え方が合っています。
大柴胡湯がよく使われるのはなぜ?
ストレス食いで有名になっている漢方薬が大柴胡湯(だいさいことう)です。
しかし、大柴胡湯が適応になるのは単に「痩せられるから」ではありません。
大柴胡湯の使用に適しているのは、ストレスで気が滞り、その停滞が熱や張りとなって内側にこもり、さらに胃腸や便通にまで影響している状態です。
つまり、「ストレスで食べたくなる」という結果だけではなく、その前にあるイライラ・張りや詰まりが合って苦しい・便が出にくいという状態に対して、大柴胡湯は用いることができます。
漢方では、ストレスが続くとまず肝の疏泄が乱れ、気の巡りが悪くなると考えます。
すると、胸脇部やみぞおちが張る、ため息が出る、怒りっぽい、気持ちが詰まる、といった変化が出てきます。さらにそれが長引くと、滞った気は次第に熱を帯びやすくなり、胃腸にこもった熱は様々な不快な症状が引き起こします。
大柴胡湯を用いるのは具体的には次のような場合です。
- ストレスでイライラしやすい
- 怒りっぽい
- 胃部につかえ感がある
- 胸脇部やみぞおちの張りや苦しさがある
- 便秘しやすい
- 口が苦い
- 舌の苔が黄色い
つまり大柴胡湯は、「ストレスで食べすぎる人に使う薬」ではなく、
ストレスで滞った気が張りつめた状態、胃腸にこもった熱、
それが食欲や便通にまで影響している状態に用います。
そういう状態を改善することで、食欲を正常に戻していきます。
だから大柴胡湯は、ストレス食いするからと言って、すべての人に合うわけではありません。
疲れていて気力がない人、むくみが強い人、胃腸が弱い人、お腹が冷えている人などには、向かないだけでなく、反って調子を崩してしまうこともあります。
まとめ
イライラすると食べてしまうのは、単なる意志の弱さだけでは済まされません。
ストレス、自律神経、睡眠、食欲に関わるホルモン、胃腸の働きなどが重なって、食欲の乱れとして現れていることがあります。
漢方薬は、「ストレス食いにはコレ」と単純に決めるのではなく、気の巡り、寒熱、便通の状態、胃腸、睡眠などを合わせて見ていくことが大切です。そうすることで、食欲の問題としてだけでなく、今の自分の体の偏りと全体像が見えてきます。
なぜ食べてしまうのかを丁寧に考えることが、対策の第一歩です。


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