【香砂六君子湯】~六君子湯に芳香健胃薬を加えた漢方薬~

香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)の解説

生薬の構成

四君子湯しくんしとう」(人参・朮・茯苓・甘草・生姜・大棗)に、2つの生薬(半夏・陳皮)を加えて「六君子湯りっくんしとう」。

その六君子湯に、香附子・縮砂・藿香の3つを加えて「香砂六君子湯」です。

香附子・縮砂・藿香はいずれも、芳香のある理気作用をもつ生薬で、胃腸のはたらきを整えます。

つまりは、六君子湯の適用する気虚ききょ脾気虚ひききょ)に、さらに(脾胃ひいの)気滞きたいを兼ねる場合に適した構成になっています。

 

↑の構成は『内科摘要』ものとされますが、出典によっては「香砂」にあたる生薬が「木香+砂仁」であるとする書籍もあります。そのほか古典的には、時代によって「藿香+砂仁」とか「香附子+砂仁」など様々なかたちの香砂六君子湯もあるようです。

効能・効果

香砂六君子湯は、六君子湯がベースでありますので、

六君子湯の適応する「胃腸が弱いこと」を基本にして、

とくに、胃もたれ腹満などの気滞の症状がみられるときに適しています。

また、もともと胃腸が弱く食欲がない、少食、みぞおちがつかえる、食後に吐き気、胃痛、慢性的な軽い腹痛、消化不良などの消化器症状があるだけでなく、

疲れやすく、気分が重い、ゆううつ、ストレスに弱い、不安感など、胃腸以外の症状を伴うときに用いられることがあります。

添付文書上の効能効果(薬局製剤)は↓

体力中等度以下で、気分が沈みがちで頭が重く、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえて疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:
胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

補足

六君子湯に比べると、理気作用が強まっているだけではありません。

まず辛温性が強まることと、

陳皮・半夏・縮砂・藿香という、燥性の生薬が多く配合されることになります。(木香の場合も同様)

あきらかに陰虚(陰液の不足による乾燥傾向で、熱っぽさ、手足のほてりなど)がみられる場合の使用は避けなければいけません。

なお、医療用エキス製剤には香砂六君子湯はありません。

そこで六君子湯に、気を巡らせる効果を加えることを意図して「六君子湯+香蘇散こうそさん」で代用されることがあります。(香蘇散には香附子が配合されています)

 

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