生地黄、乾地黄、熟地黄・・・の違い

生地黄・乾地黄・熟地黄

地黄(じおう)

地黄という生薬は、その加工状態によって名称が異なってきます。

また状態が違えば、効能もそれぞれ異なってくると考えられています。

さらに、日本の中国とでは、呼び方が微妙に異なります。

区別せずに使われていることも多いのですが、混乱しやすいのでまとめておきます。

地黄の種類

日本中国主な中薬的効能
新鮮なもの生地黄鮮地黄清熱涼血(涼性)
乾燥させたもの乾地黄生地黄(乾地黄)清熱滋陰(涼性)
酒で蒸して乾燥させたもの熟地黄熟地黄補血滋陰(温性)

地黄は、ゴマノハグサ科(APG分類Ⅲではジオウ科・APG分類Ⅳではハマウツボ科)のカイケイジオウ、アカヤジオウの根。

肥大して丸みのある形をした根であります。

地黄のうち、新鮮なもの、砂や土の中に保存したものを「生地黄(鮮地黄)」といい、

日干しまたは火力乾燥させたものを「乾地黄」といいます。ただし、中国では乾燥したものを「生地黄」と呼ぶことがあるようです。

熟地黄」とは、乾地黄を(酒で)蒸して日干しするという作業を繰り返して熟成させたものです。外面は漆黒色になります。

日本では、「生地黄(鮮地黄)」の状態のものは流通されていませんので、通常は「乾地黄」か「熟地黄」かのどちらかが使われています。

さらに熟地黄を炒って炭化させた「熟地炭」というものもあります。

 

地黄は加工の仕方の違いで、効能が少しずつ変わってくると考えられています。

地黄の効能

一般に「地黄」の性味は、甘くて後に苦みがある、寒性の薬です。

清熱涼血・滋陰生津の効能をもちます。

熱感をともなう出血(鼻血、血尿、性器出血など)のときや、

喉や唇の渇き、糖尿病のときのような口渇、多尿に使えることになります。

比較的に、「鮮地黄」の方が、苦みが強く、寒性が強いため、清熱涼血の方に適し、

乾地黄」の方が、甘みが強く、滋陰と養血に適するとされてます。

滋陰剤(主に津液を補う処方)としては、「滋陰降火湯じいんこうかとう」など、

養血剤(主に血を補う処方)としては、「四物湯しもつとう」関連のものに配合されています。

神農本草経』においては、乾地黄として「上品」に収載されています。

『薬徴』…主治血証及水病也
(主として、血液に関連して起こる種々の症候、水分の代謝・循環障害に関連して起こる種々の症候を治す。)

熟地黄について

一方、熟成させた「熟地黄」の性味は、甘くて、微温性に変化しています。

滋陰と補血の効能をもちます。さらに、生精補髄生骨し、補益肝腎にはたらくとされます。

つまり、けつの不足によるめまい、ふらつき、月経不順、

だけでなく、足腰の重だるさ、寝汗、体の芯からの熱感、耳鳴り、健忘などにも優れる薬となります。

これを踏まえると、血虚けっきょの症状があきらかなときに使う処方や、

例えば六味丸(六味地黄丸)のように腎陰虚じんいんきょに使いたい処方では、

熟地黄」の方がより妥当ということになります。

 

ちなみに「熟地炭」は止血作用をもつようです。

使い分けについて

日本で「生地黄」の入手は困難ですから

通常は「乾地黄」か「熟地黄」かのどちらかが使われているわけですが、

日本漢方ではあまり明確に区別されていなくて、たんに「地黄(ジオウ)」とだけ記載されることが通常です。

一般にエキス製剤に使われている地黄はおそらく「乾地黄」が主であり、通常「ジオウ」とだけ表記しているものは「乾地黄」と考えていいかもしれません。

しかし、漢方薬局や、漢方専門外来などで処方されるもの(薬局製剤や本格的な丸剤など)は、使い分けがなされていることも多いかと思います。

副作用について

付け加えますが、地黄は胃腸障害(下痢、食欲不振、胃もたれ、膨満感など)が起こりやすい生薬です。

これは地黄に難消化性の糖類が含まれていることが原因です。

胃腸の弱い方、下痢や軟便のときは、注意が必要です。

この消化器症状は消化の問題ですので、食前(空腹時)ではなくて食後に服用した方が(消化がゆっくりになり)、消化器症状が起こりにくくなります。

 

【地黄の語源】
ジオウの品質の良し悪しは、根を水の中に入れてその浮き沈みで(比重を)確認する。そのとき「天・地・人」を使って、浮かぶものを「天黄」、半分浮かんで半分沈むものを「人黄」、完全に沈むものを「地黄」と呼ぶ。薬用にはこの比重の重い「地黄」が適する。

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