葛根湯加川芎辛夷と辛夷清肺湯との違い、使い分け
鼻づまりに使う生薬といえば、まず「辛夷」です。
モクレンの花蕾(つぼみ)で、
カゼや副鼻腔炎の鼻水・鼻閉・頭痛に対して配合されますが、
とくに、鼻の通りを良くする効果が期待されています。
逆に、鼻づまり以外に使われることがほとんどない生薬でもありますが。
その「辛夷」を配合する漢方薬としては、その名前が入った、「葛根湯加川芎辛夷」と「辛夷清肺湯」が代表されます。
ということで、この2つを使うときのポイントをまとめます。
葛根湯加川芎辛夷の特徴
葛根湯加川芎辛夷はその名前の通り、「葛根湯」に、頭痛に効く「川芎」と、鼻づまりに効く「辛夷」を加えたものです。
・カゼからの鼻づまりで頭痛する人に使われます。
・ベースは葛根湯なので、(悪寒・発熱・頭痛をともなう)急性の症状に短期間だけ使われることが多いです。
・葛根湯と同様、項背部のこわばりやコリがあり、無汗のときに適します。
・慢性化してしまったときでも使われることがありますが、鼻だけの症状のときは「辛夷清肺湯」の方がいいです。
・麻黄と甘草が含まれているので、それによる副作用症状に気をつける必要があります。
辛夷清肺湯の特徴
名前に「清肺」という言葉が含まれるので、肺(呼吸器:この方剤の場合は主に鼻)の炎症や熱を清する(しずめる)効果が期待されています。
・やや慢性化した副鼻腔炎症状にも使われます。
・鼻が赤い、鼻に熱感がある、鼻の粘膜がヒリヒリ痛い、のどの痛みもある、などがあれば使われます。
・清熱(冷やす)作用があるので、冷え症の人にはあまり適しません。
・麻黄や甘草が含まれないので、「葛根湯加川芎辛夷」が使えないときに代わりとして選択できます。
・ただし胃腸の弱い人は長期間の服用は避けてください。胃腸をフォローする漢方薬を併用した方がいいかもしれません
生薬の薬性の違い
寒熱の観点からみれば、根本的に明確な違いがあることを示すこともできて、
単純に言えば
葛根湯加川芎辛夷には、麻黄・桂枝・大棗・生姜などの温性の生薬がたくさん配合されているので、寒証向きです。
辛夷清肺湯は、石膏・知母・麦門冬・山梔子・黄芩などの寒性の生薬がたくさん配合されているので、熱証向きです。
風寒のカゼで、うすくて透明のサラサラな鼻水が出ているなら⇒葛根湯加川芎辛夷
風熱のカゼで、濃くて黄色い粘っこい鼻水が出ているなら⇒辛夷清肺湯
留意点
葛根湯加川芎辛夷と辛夷清肺湯は、ともに鼻づまりに用いられますが、
辛夷が配合される以外に、生薬での共通点はありません。
鼻づまり(鼻閉)がひどいときなどは、「葛根湯加川芎辛夷」と「辛夷清肺湯」とを併用されることも、場合によってはあるかもしれません。
また、実際にはこれら2つの漢方薬以外にも、鼻づまりに応用されるものは色々とあると思いますので、
鼻づまり以外の症状にも応じて、臨機応変にお願いいたします。
例えば、漢方では「肺」の治療において、まず「脾」のはたらきから改善しておく方法が採られることもあります。
そのため胃腸系の漢方薬の併用が考慮されることがあります。
それから、副鼻腔炎などでは、抗菌薬を使用するのが確実な場合もありますので、症状が長引く場合は、医療機関を受診しましょう。
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