腎は生命力のもと
腎臓といえば、からだの不要なものを尿として排泄する臓器なのですが、
東洋医学的な「腎」は、その他に「生命力のもと」とされる重要な概念があります。
腎のはたらき、または腎が弱ったときの影響を、かんたんに3つに整理します。
水分代謝を管理する
腎はまず、もちろん泌尿器の臓器である腎臓のことを指します。
その腎のはたらきで重要なことは、体の水分代謝を管理していることです。
体にある水を、
- 必要な水と不要な水とに分ける
- 必要な水は肺に上げる
- 不要な水(尿)は膀胱に下ろす
そして尿を排泄するところまでを腎が管理していると考えています。
つまり腎が弱ると・・・
- 不要な水が体内に浮腫として停滞します
- 尿が出にくくなったり、頻尿になったりします
- トイレのタイミングをコントロールできず失禁したりもします
腎は精を貯蔵する
もうひとつ東洋医学としての腎の特徴は、成長・発育・老化・生殖機能へのはたらきです。
腎が精を貯蔵することを蔵精といいます。
腎にある精(腎精)は、血・骨・歯・脳・生殖・生命活動の原料の根源となるものです。
ですので この腎精が少ない場合、骨格・知能・生殖機能・体力などの面で衰えがみられることになります。
これは決して東洋医学だけの特殊な考えではないと思います。
西洋医学的にも、腎臓というのは利尿するだけではありません。
血圧を維持すためのホルモン(レニン)や、造血に必要なホルモン(エリスロポエチン)を分泌していますし、
それから骨を丈夫にするのに必要なビタミンDの活性化にも関わっています。
さらに副腎を含めますと、日常生活を維持するための、血圧、血糖、疲労や倦怠感、様々なホルモンの調節に関わっていることが分かります。
“腎精=ホルモン”とする場合もありますが、
東洋医学の長い歴史の中では、ホルモンというものが解明される前から、 腎には腎精が蓄えられていて、これが生命の根源で、寿命をまっとうするための基礎となる、と考えられてきたのです。
よって腎が弱った場合、
白髪や抜け毛が増える、歯が抜けやすい、骨が折れやすい、物忘れしやすい、疲れやすい、足腰が重だるい、性欲が衰える、ED、早期の閉経、不妊・・・
などがみられます。
腎は納気を主る
さらに腎には「納気を主る」という機能があります。
大気から気(清気)を吸い込むのは「肺」です。
そしてその気を体内に取り込むのは「腎」の役割です。
これを納気と言います。
腎が弱ると・・・
肺の気が腎まで下がって行かず、肺が新しい気を吸い込むのに支障が出てきます。
呼吸のうち、吸気が苦しくなってきます。
以上が、東洋医学における「腎」の役割です。
そして腎虚(腎が弱ったもの)に対する補腎の代表的な方剤が八味地黄丸です。↓
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