尿路結石の漢方薬
「脇腹から背中にかけて突然の激痛」
「血尿や吐き気を伴う強い発作」
──尿路結石は人生で最も強い痛みのひとつといわれます。
結石は腎臓から尿管・膀胱に至る尿路にでき、排尿の流れを妨げることで激しい疝痛発作を引き起こします。
吐き気や嘔吐が起こることもあります。
西洋医学では、石が小さければ自然排石を待ち、大きい場合は体外衝撃波(ESWL)や内視鏡での治療が行われます。
一方漢方では、結石そのものを「溶かす」薬はありませんが、痛みの緩和・尿の流れを促す・再発を防ぐ体質改善を目的に用います。
尿路結石の原因(西洋医学の視点)
尿路結石は、尿の中のカルシウムや、シュウ酸、尿酸などの成分が結晶化して固まってできるものです。水分不足、動物性タンパクや塩分の過剰摂取、生活習慣、遺伝体質など、いくつかの要因が関与して形成されます。再発率が高く、5年以内に約半数が再発するといわれています。
漢方からみた尿路結石
漢方では、尿路結石による痛みや排尿困難を「石淋(せきりん)」といいます。
主に、湿熱(しつねつ)が下焦に滞ることで、尿中の物質を結晶化させて結石を形成すると考えられています。
さらに再発を繰り返す方は、漢方の「腎」の働きが低下して「水分代謝が弱い(腎虚)」ことが根底にあるケースも少なくありません。
- 急性期(実証):激しい疝痛・血尿 → 清熱利湿・通淋の方剤で痛みと炎症を鎮め、尿の通りを良くする
- 再発予防(虚証):腎虚や気虚を補い、水分代謝を整えて石ができにくい体質に導く
尿路結石に用いられる代表的な漢方薬
猪苓湯(ちょれいとう)は尿の流れを促し、残尿感や血尿を改善します。
五淋散(ごりんさん)は、排尿痛や血尿を伴う石淋・熱淋に用いられ、結石による尿路の炎症を鎮め、排出を助けます。
炎症や痛みが強い場合は、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)で下焦の湿熱を取り、尿路の通りをスムーズにします。
結石発作による激しい疝痛には、筋肉のけいれんを緩める芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)が用いられます。即効性があり、鎮痛薬との併用で発作を和らげる目的に適します。
尿管の排石を促すために大建中湯(だいけんちゅうとう)が応用されることもあり、結石の自然排出を後押しします。
再発を防ぐには、腎虚を補うために八味地黄丸・牛車腎気丸・六味地黄丸が用いられることもあります。
養生と生活習慣の工夫
尿路結石は生活習慣病の一面も持つため、日々の工夫が再発予防につながります。
まず最も重要なのは十分な水分摂取です。こまめに水を飲み尿量を保ちます。
動物性タンパクや塩分を控えめにし、野菜や果物をバランスよく摂取すると、尿の酸性度が安定し結石ができにくくなります。
アルコールや過剰な糖分は尿酸値を上げるため控えめに。適度な運動で代謝を整えることも大切です。

まとめ
結石のサイズや位置によっては自然排石が難しく、放置すると腎機能障害や感染を起こす危険があります。
激痛・高熱・排尿困難を伴う場合は速やかに泌尿器科を受診してください。漢方はあくまで補助的役割と考え、急性期には西洋医学との併用を基本とします。
尿路結石は再発防止と体質改善が治療の柱となります。漢方では急性期の痛みや炎症を和らげるだけでなく、腎虚や水分代謝の弱さを整えて「結石のできにくい体質づくり」を目指します。
「結石が再発しやすい」「常に不安がある」という方は、一度漢方相談をご検討ください。
