自律神経失調症の漢方
検査では「異常なし」と言われても、動悸やめまい、息苦しさ、冷えやほてり、突然の不安や眠れない夜が続く、といったことがあります。
それは気のせいではありません。体が「この状態はしんどいよ」と知らせているサインです。
漢方は、そのサインを丁寧に受け取り、症状を抑え込むのではなく、体質に合わせ根本からバランスを整えていきます。
自律神経とは
自律神経とは、体の「自動調整装置」。
自律神経は、私たちが意識しなくても働き続ける体のコントロールセンターです。
活動モードの交感神経と、休息モードの副交感神経が、昼と夜、緊張とリラックスの切り替えを担っています。
自律神経が調整している主なはたらき
心拍・血圧・血流、呼吸と酸素取り込み、体温調節と発汗、胃腸の動き(食欲・消化・吸収・排便)、膀胱や血管の収縮・拡張、ホルモン分泌や免疫応答、瞳孔の開閉、そして睡眠と覚醒のリズムまで「全身の日常」を当たり前に支え続けているのが自律神経です。
自律神経を乱す主なきっかけ
自律神経は繊細で、さまざまな要因の影響を受けます。
例えば、心理的ストレスや人間関係の悩み、情報過多や過密スケジュール。
睡眠不足・昼夜逆転・長時間労働など生活リズムの乱れ。
更年期・産後・月経前などのホルモン変化や、感染後・長引く炎症。
寒暖差・気圧の変化・脱水・低血糖といった環境や体内の要因。
さらにカフェイン・アルコール・ニコチン、夜間の強い画面光(ブルーライト)、長時間同じ姿勢やマルチタスクも、切り替えを難しくします。
こうした要因が積み重なると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなり、体は「止まりたいのに止まれない」「動きたいのに動けない」という状態になって、さまざまな不調が表に出てきます。
症状は体からのメッセージ
調子の変化は「異常がある」というより、体が助けを求める合図です。
早めに生活のリズムや環境を整え、体質に合ったケアを始めるほど、回復はスムーズになります。
漢方では、このサインを強引に抑え込むのではなく、原因となる不調のバランスを整え、穏やかに「頑張れる体」を取り戻すことを目指します。
漢方から見た背景
漢方では、自律神経の乱れを五臓から捉えます。
中でも要となるのが心(しん)・肝(かん)・腎(じん)です。
心(しん)
安心の土台をつくる(心気虚・心血虚・心陰虚)
心は精神の中心。気・血・陰に養われて安定します。心が十分に養われないと、不安・動悸・浅い眠りが続き、ちょっとした刺激で疲れやすくなります。
肝(かん)
疏泄(そせつ)で気の流れを調える(肝鬱・肝火・肝陽上亢・肝血虚)
肝は気血の流れと感情のリズムを整えます。疏泄が滞ると胸や喉の詰まり、イライラ、緊張が高まり、上へ熱がのぼりやすくなります。養う血が不足すると、筋のこわばりや神経過敏が続きます。
腎(じん)
体力と回復力の土台
腎はエネルギーの貯蔵庫。慢性疲労や加齢、長引くストレスで弱ると、気力が湧かず、めまいや倦怠、夜の不安が続きやすくなります。心腎不交では、心を落ち着ける力が不足し、不眠や不安が長引きます。
体質に合わせた漢方の一例
自律神経失調症は「動悸」「不安」「不眠」「めまい」「冷えやのぼせ」など、あらわれる症状が人によって大きく異なります。漢方では、その方の体質や背景に合わせて方剤を選びます。
代表的なものとして、よく用いられるのが柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)です。
ストレスや緊張で神経が昂ぶり、不安やイライラ、動悸、眠れないといった症状に用いられることが多く、乱れがちな「心」と「肝」のバランスを整えて、気持ちを落ち着けていきます。
そのほか、
不安や動悸・冷や汗が目立つ方には桂枝加竜骨牡蛎湯、炙甘草湯
疲労感・物忘れ・食欲不振を伴う方には帰脾湯などが用いられることもあります。
同じ「自律神経失調症」と言われても、背景にある体質は一人ひとり異なります。
どれが適しているかは、症状の経過や体質を詳しく伺った上で決めていきますので、ぜひ専門家にご相談ください。
日々の養生
自律神経を整える習慣
朝の光を浴びて体内時計をリセットし、日中はこまめに深呼吸。夕方以降はカフェインを控え、寝る前は画面の光を弱めて静かな時間をつくりましょう。
食事は温かいものをゆっくり噛んで。雑穀のお粥や具だくさんの味噌汁は脾をいたわり、ナツメや百合根、クコの実などの小さな薬膳素材でも心を支えます。
そして一人で抱え込まず、言葉にして外へ出すことも大切です。話す行為そのものが、滞った「気」の流れをほどいてくれます。
まとめ
体のサインに気づいたら、早めに整える
自律神経は、あなたの毎日を静かに支える存在。
調子の変化は、体からの大切なメッセージです。
心・肝・腎のバランスを整え、体質に合わせた方剤で、「また前向きに頑張れる」状態を無理なく取り戻すお手伝いをします。どうぞ遠慮なくご相談ください。
