PMS(月経前症候群)にお悩みのあなたへ

PMS(月経前症候群)にやさしく寄り添う漢方

PMS(月経前症候群)の漢方薬

「生理の前になるとイライラする」「落ち込みやすくなる」「肌荒れやむくみがひどくなる」――こうした心身の不調は、月経前にホルモンバランスが大きく揺らぐことで起こるPMS(月経前症候群)かもしれません。

漢方では、症状の背景にある「気・血・水」の乱れや「五臓六腑」の働きのバランスに注目し、心身両面からのアプローチで根本改善を目指します。薬を飲むほどではないけれど、毎月つらい…そんなお悩みにも、やさしく寄り添えるのが特徴です。

PMSでよくあるお悩み

PMSの症状は、身体面と精神面の両方に現れるのが特徴です。たとえば、生理前になると怒りっぽくなる、気分が落ち込む、涙もろくなるなど感情面の変化が起こることがあります。また、乳房の張りや腹部の鈍痛、下半身のむくみなど身体的な不快感も多くみられます。さらに、強い眠気や集中力の低下、過食傾向、肌荒れや吹き出物の増加など、日常生活に影響を与える症状も少なくありません。

月経前症候群(PMS)の症状/こんなお悩みありませんか?

漢方の考え方

漢方では、PMSは主に「肝気鬱結(かんきうっけつ)」「気滞血瘀(きたいけつお)」といった状態が背景にあると考えます。ストレスや疲労が続くことで、感情や自律神経のバランスを司る「肝」の働きが滞り、全身の気や血の巡りが乱れます。その結果、イライラや落ち込み、頭痛、むくみ、便秘、肌荒れなど多様な症状が同時に現れます。

漢方治療では、肝気を整えて巡りを回復することを基本とし、さらに体質や症状の特徴に応じた対策を組み合わせます。たとえば、イライラや怒りっぽさが強い場合は気の巡りを促し熱をさます処方を、むくみや冷えが目立つ場合は水分代謝を整えて温める処方を選びます。頭重感やめまいがある場合は、脳への血流や気の流れを改善する視点が重要です。

使用される代表的な処方

  • 加味逍遙散かみしょうようさん
    …情緒不安定、イライラ、疲労感、頭痛、肩こりなど、精神症状と身体症状が混在するタイプに。こもった熱をさましつつ気の巡りを回復します。
  • 当帰芍薬散とうきしゃくやくさん
    …貧血傾向や冷え、むくみがあり、疲れやすく頭痛も伴う方に。血を補いながら水分代謝を整え、体力の底上げを図ります。
  • 桃核承気湯とうかくじょうきとう
    …便秘やのぼせ、イライラ、精神不安がある場合に。瘀血を改善し、下半身にこもった熱や張りを和らげます。
  • 女神散にょしんさん
    …のぼせやめまい、ほてり、情緒の乱れがあるときに。気血の停滞を整え、心身の安定を促します。
  • 柴胡桂枝乾姜湯さいこけいしかんきょうとう
    …神経過敏、不安、不眠、動悸、倦怠感などがある方に。寒熱のアンバランスを調整しながら心を落ち着けます。
  • 半夏白朮天麻湯はんげびゃくじゅつてんまとう
    …胃腸虚弱で、むくみや重い頭痛、めまい、ふらつきがある方に。消化機能を高めつつ水分代謝と血流を改善します。

など
これらの処方はあくまで一例であり、同じPMSでも体質や症状の組み合わせによって適する漢方薬は異なります。
※体質・体調に応じて適した処方をご提案いたします。

養生(セルフケア)のポイント

PMSの症状は、生活習慣やストレスの影響を受けやすいため、日常のセルフケアが改善への近道になります。まず大切なのは十分な睡眠です。特に月経前は自律神経が不安定になりやすく、睡眠不足は情緒の乱れや頭痛、むくみを悪化させます。就寝前はスマートフォンやパソコンの使用を控え、カフェインやアルコールの摂取を避けて、質の良い睡眠を心がけましょう。

適度な運動は気血の巡りを促し、むくみや冷えを防ぐ効果があります。ウォーキングやヨガ、軽いストレッチは、ストレス解消にも役立ちます。また、腹式呼吸や瞑想を取り入れると、感情の波が穏やかになりやすくなります。

食事では、鉄分やタンパク質を豊富に含む食材(赤身肉、魚、大豆製品、卵)を意識的に取り入れ、貧血やエネルギー不足を防ぎましょう。塩分や砂糖の過剰摂取はむくみや血糖値の乱高下を招くため控えめにします。ビタミンB群(玄米、豚肉、ナッツ)やマグネシウム(海藻、ゴマ、バナナ)は、神経の安定にも役立ちます。

ストレス対策も重要です。PMS期は感情の起伏が大きくなりやすいため、趣味や軽い運動、深呼吸、アロマ浴など、自分なりのリラックス方法を見つけておきましょう。人間関係の摩擦や仕事の負荷が強い時期は、意識的に予定を詰めすぎないことも大切です。

こうした養生は、漢方薬の効果をサポートし、症状の再発や悪化を防ぐ力になります。毎月のつらさを少しずつ軽くするために、できることから始めてみましょう。

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