月経痛(生理痛)の漢方薬
「痛み止めを飲まないと動けない」「毎月、生理のたびに寝込んでしまう」――そんなつらい生理痛を我慢していませんか?
月経痛は単なる一時的な不調ではなく、体が発しているSOSサインかもしれません。漢方では、体質や症状の背景にある原因を見極め、根本からの改善を目指します。
生理痛でよくあるお悩み
生理痛は痛みだけでなく、心身にさまざまな影響を及ぼします。代表的な症状には以下のようなものがあります。
- 下腹部の激しい痛みや鈍痛があり、日常生活に支障をきたす
- 生理前から頭痛や腰痛が現れる
- 体が冷えやすく、生理中にお腹が張る
- 気分が落ち込みやすく、イライラや集中力低下がある
- 経血に塊が混じる、月経周期が不安定になる
漢方の考え方
漢方では、月経痛の背景には主に瘀血(おけつ)・気滞(きたい)・寒凝(かんぎょう)といった状態が関わっていると考えます。
瘀血は血流の滞りで、経血の塊や刺すような痛みを伴うことが多く、顔色のくすみや冷えのぼせも見られます。気滞はストレスや緊張で気の流れが滞る状態で、周期的に痛みが増したり、胸やお腹の張り感を伴います。寒凝は冷えが子宮周辺に影響し、血行を悪化させることで鈍い痛みや冷えを強めます。
漢方治療では、瘀血が強い場合は活血化瘀(血の巡りを改善)、冷えが強い場合は温経散寒(温めて血流を促す)などの方法を用い、体質に合わせて処方を選びます。
使用される代表的な処方
- 桂枝茯苓丸
…瘀血による下腹部痛、経血の塊、冷えのぼせに。血行を促進し、滞った血を流します。 - 当帰芍薬散
…冷え性でむくみや頭重感があり、体力が低めの方に。血と水分代謝を整えて痛みをやわらげます。 - 桃核承気湯
…瘀血タイプで便秘やのぼせ、イライラを伴う場合に。下腹部の張りや熱感を改善します。 - 牛膝散…
経血量が少なく痛みが強い瘀血タイプに。骨盤周辺の血流を促し、慢性的な痛みを和らげます。 - 当帰建中湯
…当帰芍薬散よりもさらに虚証(体力低下)タイプに。虚弱体質や産後の生理痛にも用いられます。 - 加味逍遥散
…ストレスや不安、不眠を伴う場合に。情緒の安定と血行促進を改善します。
など
※体質・体調に応じて適した処方をご提案いたします。
養生(セルフケア)のポイント
月経痛を軽減するためには、日常の生活習慣の見直しが欠かせません。まず体を冷やさないことが基本です。特に腰や下腹部を温めることで血流が改善し、痛みの緩和につながります。腹巻やカイロを活用するのも有効です。
食事では、血行を促す生姜、ねぎ、にんにく、シナモンなど温性の食材を適度に取り入れ、冷たい飲み物や生ものを控えることが大切です。貧血予防のために、赤身肉やレバー、ほうれん草、黒ごまなど鉄分豊富な食材も意識しましょう。
運動では、軽いウォーキングやストレッチ、ヨガなどで下半身の血流を促進します。過度な運動は控えつつ、毎日少しずつ体を動かす習慣をつけましょう。
ストレスも血流を悪化させる要因の一つです。深呼吸、アロマ浴、趣味の時間など、自分が心地よいと感じる時間を日常に取り入れることが、症状の再発予防にもつながります。
こうした養生を続けることで、漢方薬の効果が高まり、痛みが起こりにくい体づくりが可能になります。
