月経不順・無月経の漢方薬
「生理がいつ来るか分からない」「3か月以上止まっている」「周期がバラバラで不安」――こうした月経の乱れは、放っておくと将来の妊娠や全身の健康にも影響する可能性があります。西洋医学ではホルモン剤が使われることが多いですが、漢方では体質や生活習慣も含めた総合的な調整によって、周期の安定と根本改善を目指します。
月経不順でよくあるお悩み
- 生理の周期が不規則で、いつ来るか分からない
- 無月経(3か月以上生理が来ていない)
- 排卵が安定せず、妊娠への影響が心配
- 月経が早すぎる、または遅すぎる
- 経血が極端に少ない、または期間が短すぎる
漢方の考え方
漢方では、月経不順や無月経の背景には「血虚(けっきょ)」・「腎虚(じんきょ)」・「気滞(きたい)」といった体質傾向が関与すると考えます。
血虚は血の不足によるもので、経血量が少ない、顔色が青白い、めまいや動悸を伴うことが多く見られます。腎虚は生殖機能やホルモンバランスをつかさどる「腎」の力が不足した状態で、無月経や周期の長期化、足腰のだるさ、ほてりなどを伴います。気滞はストレスや緊張により気の流れが滞り、周期の乱れや排卵障害につながります。
また、生活習慣の乱れや過度なダイエット、冷え、産後・病後の体力低下なども、月経リズムの乱れに影響します。漢方では、「補血」「補腎」「理気」などの方法を組み合わせ、体質と症状に応じた柔軟な処方を行います。
使用される代表的な処方
- 温経湯
…冷え症で手足の冷えやほてり、口唇の乾燥があり、無月経や周期の乱れがある方に。温めて血行を促し、生殖機能の活性化を目指します。 - 当帰芍薬散
…貧血傾向や冷え、むくみがあり、極端なダイエットや体力低下が背景にある場合に。血と水分代謝を整えて体力を養います。 - 桂枝茯苓丸
…瘀血タイプで冷えのぼせや肩こり、頭痛を伴う場合に。血行を促進し、停滞を改善します。 - 桃核承気湯
…便秘やほてり、精神不安を伴う瘀血タイプに。下半身の血流や熱感の改善に有効です。 - 芎帰調血飲
…産後や病後の体力低下に伴う月経不順に。血行促進とともに体力の回復を助けます。 - 六味地黄丸
…腎虚タイプで足腰のだるさ、手足のほてり、疲労感がある場合に。腎を補い、生殖機能の底力を引き上げます。
など
※体質・体調に応じて適した処方をご提案いたします。
養生(セルフケア)のポイント
月経不順や無月経の改善には、日常生活の見直しも欠かせません。まず十分な休養とバランスの取れた食事を心がけ、極端な食事制限や過度な運動を避けることが重要です。鉄分やタンパク質を含む食材(赤身肉、魚、卵、大豆製品)を積極的に摂り、血やホルモンの材料をしっかり補給しましょう。
冷え対策も必須です。特に下半身や腰回りを冷やさないようにし、腹巻きやカイロを活用します。温かい飲み物やスープを取り入れ、体を内側から温めましょう。
ストレスの軽減も大切です。自律神経の乱れはホルモンバランスに直結するため、趣味や軽い運動、深呼吸、瞑想など、自分に合ったリラックス法を持つことが望ましいです。
こうした養生を継続することで、漢方薬の効果が高まり、安定した月経リズムを取り戻しやすくなります。
