『傷寒論』のあらまし 第8条~第10条 日にちが経てば自然に治ったりもする

傷寒論 第8,9,10条 自然治癒

『傷寒論』第8条~第10条

8条から10条までは、太陽病において、特別漢方薬を使わなくても、自然に治癒する状態もあることが挙げらられています。

ただしこの辺りは、漢方理論上の話と、臨床経験上の話との、整合性をとろうしている内容でもある感じがします。

ただの風邪(カゼ)ではよくあることだな、くらいに思って読み進めてください。

第8条

太陽病、頭痛、至七日以上、自愈者、以行其経尽故也、若欲作再経者、針足陽明、使経不伝則愈

読み方⇒太陽病、頭痛して、七日以上に至り、自ら愈ゆる者は、其の経をめぐり尽くすを以ての故なり。もし再経をさんと欲する者は、足陽明に針し、経をして伝えざらしむれば則ち愈ゆ。

意味⇒太陽病で、頭痛が7日以上続き、自然に治癒するのは、その経絡をめぐり尽くしたためです。もし再び経絡に侵入しようとしているなら、足の陽明経に鍼をして、経を伝わらないようにすれば治癒します。

解説

頭痛は第1条に書かれているように、太陽病の代表的症状のひとつです。

前の第7条で、陽病から発病する者は7日で治癒する、と書いていましたが、その理由として、自然に治るのは病邪が太陽の経絡(経脈)をめぐり尽くしたためだと言っています。

経絡とは、気や血の通路です。

経絡の話では理解しづらいのですが、考え方としては…

現代においても、一般的なところの「カゼ」が治るのに要する期間は7~10日と言われているように、

侵入してきた病邪(ウイルス)が経絡を漂っているうちに、7~10日程もすれば、それに対する免疫がついてきますので、自然と病邪の勢力は弱まってくるはずです。

そのことを、免疫の仕組みが解明されていない時代において、このような理屈で理解したのかもしれません。

(もし7日以上して治らないときは、次の陽明経の経穴(ツボ)に鍼をすれば良いらしいのですが、ちょっと割愛させていただきます。)

第9条

太陽病、欲解時、従巳至未上

読み方⇒太陽病、せんと欲する時は、よりひつじかみに至る。

意味⇒太陽病が治ろうとする時刻は、だいたい午前9時~午後3時の間である。

解説

十二時辰

十二支で読む時計でみてみますと、

巳の刻は、午前9時~午後11時

未の刻は、午後1時~午後3時くらいです。

つまり巳から羊とは、うまの刻(正午)をはさんで、自然界であれば太陽が南の方角にあってよく昇っている時間滞のことです。

陰陽で言えば、最も「陽」が盛んな時間。

人の体もこの陽気の影響を受けると考えて、太陽病に対抗する正気も強くなり、この時間滞に治癒に向かう、ということです。

理論上の話としての意味合いも濃いので、参考程度にしておきましょう。

逆に、カゼを引きやすい時間は、当然、夜ということになります。風邪(ふうじゃ)の侵入を防ぐため、きちんと布団をかぶって、温かくしてお休みください。

第10条

風家、表解而不了了者、十二日愈

読み方⇒風家、表解して了了たらざる者は、十二日にして愈ゆ。

意味⇒風邪(カゼ)にかかりやすい人で、表証は改善したのにスッキリしないものは、12日したら治ります

解説

普段からカゼをひきやすい、体力の虚弱な方であれば、

熱や頭痛が治まったあとも、急に元気が出て爽快な気分になるのでなくて、

なんとなくだるいな、本当に治ったのかなどうなのかな…という日が続くこもあるでしょう。

でも、特別なことはしなくても、12日もしたら良くなりますよ、という話。

12日という日数の根拠は不明です。が、これも実際そのくらいですね。

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