エキス製剤にない漢方薬をエキス剤の合方(併用)で対応する例

合方とは

合方:「ごうほう」または「がっぽう」

合方とは、2種類以上の方剤を合わせて使用すること。

エキス剤を煎じ薬に近づける

漢方の治療は、一人ひとりの症状に合った治療をするのが理想です。

あるいは漢方薬を使用するときは、なるべくその人の体質に合った薬を使用するべきです。

本来の煎じ薬であれば自由に生薬を足したり引いたりして調整することができます。

一方、パッケージされているエキス製剤では、生薬ごとの配合や分量の変更ができません。

エキス剤の種類も限られているため、本来使いたい方剤がエキス剤で手に入らないこともあります。

本来であれば既製のエキス製剤になければ、煎じ薬で作らざるを得ないわけですが、

どうしても煎じ薬は、入手が困難、手間がかかる、値段が高くなる等の問題があり、

なるべくエキス剤で対応したいということも多いでしょう。

そういうとき、医療機関によっては、既存のエキス剤を合方(併用)することで、本来使いたかった方剤に近づける、という方法がとられることがあります。

合方の例

処方意図 合方での対応
越婢加半夏湯 越婢加朮湯+半夏厚朴湯
葛根黄連黄芩湯 升麻葛根湯+黄芩湯
葛根加半夏湯 葛根湯+小半夏加茯苓湯
加味逍遙散加川芎地黄 加味逍遙散+四物湯
甘草瀉心湯 半夏瀉心湯+甘草湯
帰耆建中湯 当帰建中湯+黄耆建中湯
桂姜棗草黄辛附湯 桂枝湯+麻黄附子細辛湯
桂枝加苓朮附湯 桂枝湯+真武湯
桂枝二越婢一湯 桂枝湯+越婢加朮湯
桂枝二越婢一加朮附湯 桂枝加朮附湯+越婢加朮湯
桂麻各半湯 桂枝湯+麻黄湯
血府逐瘀湯 四逆散+桂枝茯苓丸
四逆散+四物湯+桂枝茯苓丸
香砂六君子湯 香蘇散+六君子湯
五虎二陳湯 五虎湯+二陳湯
柴葛解肌湯 葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏
柴胡四物湯 小柴胡湯+四物湯
柴胡疏肝湯 四逆散+香蘇散
柴芍六君子湯 四逆散+六君子湯
柴胡桂枝湯+六君子湯
小青竜湯加杏仁石膏 小青竜湯+麻杏甘石湯
小青竜湯加石膏 小青竜湯+桔梗石膏
小青竜湯加茯苓杏仁 小青竜湯+苓甘姜味辛夏仁湯
小青竜湯加附子 小青竜湯+麻黄附子細辛湯
柴蘇飲 小柴胡湯+香蘇散
大青竜湯 麻杏甘石湯+桂枝湯
麻黄湯+越婢加朮湯
中建中湯 大建中湯+小建中湯
大建中湯+桂枝加芍薬湯
調中益気湯 補中益気湯+真武湯
八珍湯 四物湯+四君子湯
白虎加桂枝湯 白虎加人参湯+桂枝湯
茯苓四逆湯 人参湯+真武湯
麻黄甘草附子湯 麻黄附子細辛湯+甘草湯
苓桂甘棗湯 甘麦大棗湯+苓桂朮甘湯
連珠飲 四物湯+苓桂朮甘湯

合方の注意点

ただし、エキス製剤の合方には欠点があります。

重複する生薬がある場合は、原則として分量の多い方剤の量に順じるべきなのですが、

エキス製剤ではそれができないので、満量のまま合方すると、一部の生薬が過量になることがあります。

例えば2つの漢方薬「A」と「B」を合方する場合、

それぞれに同じ生薬が、「A」には2g、「B]には3g含まれているなら、

煎じ薬で「A+B」を作るときは、原則として多い方の3gだけ使用します。

しかしエキス製剤では「A」+「B」だと、5g服用することになります。

過量になっていないか、過量になっても問題ないのか、慎重に判断をされたうえで、使用していただく必要があります。

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