排尿困難・残尿感の漢方薬|前立腺肥大を体質から整える

尿の勢いが弱い・残尿感 前立腺肥大に漢方の力

排尿困難・残尿感の漢方薬

「尿が出にくい」
「残尿感がある」
「勢いが弱い」
「排尿に時間がかかる」

──排尿困難は特に中高年男性に多く見られる症状です。
代表的な原因は前立腺肥大であり、加齢とともに増える悩みのひとつです。
一方で女性や高齢者では、膀胱機能の低下や腎虚・気虚といった体質的な衰えから排尿困難が起こることもあります。
西洋医学では薬物療法や手術が中心ですが、漢方では体質を整えて排尿機能を改善し、再発を防ぐことを目指します。

前立腺肥大と「腎」の関係

漢方でいう「腎」は、単に腎臓という臓器のことではなく、成長・発育・生殖・加齢・泌尿機能など、生命の根本を司る広い概念です。
加齢とともに腎の力(腎気・腎精)が衰えると、膀胱をコントロールする働きも低下し、排尿困難や夜間頻尿が増えてきます。
前立腺肥大も加齢に伴う変化であり、その背景には腎虚(腎のはたらきの低下)があると考えられます。したがって、漢方では単に尿の通りを良くするだけでなく、腎を補い体の土台を整えることが重要になります。

漢方医学から見た排尿困難

漢方では、排尿困難や残尿感を「気虚」「腎虚」「湿熱」などの体質的要因から捉えます。

  • 腎虚:腎の働きが弱まり、尿の出が悪い・夜間頻尿・腰や膝のだるさを伴う。高齢男性の前立腺肥大に多い。
  • 気虚:膀胱の「気化作用」が不足し、尿を押し出す力が弱い。疲れやすく、尿が途中で途切れる。
  • 湿熱:膀胱に湿熱がこもり、尿が出にくく痛みや灼熱感を伴う。前立腺炎や感染症を繰り返す場合に多い。

また、尿道を圧迫する前立腺結節の形成は、瘀血の状態を引き起こしている可能性があることを考慮します。

排尿困難に用いられる代表的な漢方薬

  • 八味地黄丸(はちみじおうがん)は腎虚による排尿困難・夜間頻尿・冷えに広く用いられます。
  • 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は腎虚+冷え・しびれを伴うタイプに適します。
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は気虚による排尿困難・尿が途中で止まるようなタイプに。
  • 清心蓮子飲(せいしんれんしいん)は気虚+ストレスによる尿の出にくさに。

生活養生のポイント

排尿困難や残尿感を軽減するには、日常生活の工夫も大切です。
冷えは膀胱機能を弱めるため、下腹部や腰を温める習慣を持ちましょう。腎陽を守り、排尿を助けます。
利尿作用のあるカフェイン・アルコールを摂りすぎないように調整し、就寝前の水分は過剰に摂らず、日中にバランスよく水分を補給します。
適度な運動や骨盤底筋体操で下半身の筋力を維持することも、尿の勢いを保つ助けになります。
ストレスや緊張も排尿を妨げるため、深呼吸や軽いストレッチでリラックスする時間を持つことも効果的です。

また、意外に重要なのが便秘との関係です。前立腺肥大がある方は便秘で直腸がふくらむと膀胱や尿道を圧迫します。「いきむ」状態も前立腺を圧迫し排尿困難が悪化しやすくなります。便通を整えることは、排尿トラブルの改善にも直結します。繊維質をとり、適度な運動を心がけましょう。

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まとめ

排尿困難や残尿感は、単なる加齢のせいではなく、腎虚・気虚・湿熱といった体質的要因が深く関わっています。
「尿の出が悪い」「残尿感が続く」といった悩みがある方は、漢方相談をご検討ください。

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