『傷寒論』第1条
漢方薬を勉強しようと思えば、避けては通れない『傷寒論』。
「カゼのひきはじめには葛根湯が良いらしい」という知識だけで葛根湯を使うのと、
葛根湯を使うべき根拠を押さえながら葛根湯を使うのとでは、
もし、葛根湯が効かなかったときでも
なんで?となるか、あ、なるほど!となるかの違いが生じるかもしれません。
実際には『傷寒論』を一言一句カンペキに理解するのは難しく
読み方によって、例えば理論的に読むか、臨床に即して読むかでも、解釈が変わることもあるでしょうし、
分かった気で読み返すと、また分からなくなったり
まだまだ読み足りないのでしょうけど、読めば読むほど発見のある古典です。
なんとな~くでも、まぁ『傷寒論』には大体こんな感じのことが書かれてあるんだなぁ
という気持ちで、参考にしてください。
そして、もし興味が沸いてきたら、ご自身でも読んでみてください。
いろいろな解説本がありますので、自分に合ったものをお探しください。
第一条の前に前置きとして、『傷寒論』がなぜ書かれたのかという序章みたいなものや脈についての話がありますが、
薬(方剤)に関係する「太陽病」の話から読み進めていきたいと思います。
ではさっそく第1条へ。
第1条
読み方⇒太陽の病たる、脈浮、頭項強痛して悪寒する。
意味⇒太陽病という病は、脈は浮いて、頭や項(うなじ)が強く張って痛んで、悪寒がするのである。
太陽の病
『傷寒論』では、病気というものを、3つの「陽病」と3つの「陰病」に分けて考えています。
「太陽病・少陽病・陽明病」と「太陰病・少陰病・厥陰病」です。
病気の進行は、太陽病から始まり、
太陽病→少陽病→陽明病→太陰病→少陰病→厥陰病
と右へ行くほど危険な状態になりますが、
必ずこの順で進んでいくわけではなく、
例えば、太陽病からすぐ太陰病へ、
少陽病からすぐ厥陰病へと進行していくこともあります。
しかしながら、陽病の始まりとしては、太陽病からになります。「太」は陽病の初めという意味です。
太陽経の経絡は、頭から背面を通って腰、足へと続きます。
体表に近いところの経絡なので、外からの病気の侵入があれば、まず太陽経が影響を受けます。
脉が浮
体表に近いところで病が起こっているので、
脈も体表に浮き上がってきています。
手首の親指側にある橈骨動脈に、軽く触れて感じられるような脈です。
脈の状態がそれほど重要なのか?と思われるかもしれませんが、
当時は、レントゲンも採血も検尿も内視鏡も、もちろんインフルエンザ迅速診断キットなども無い時代です。
脈に触れることも診断の手掛かりとしては大事だったということです。
頭項強痛
太陽経に沿って、頭から項、背中にかけて、
気血の巡りが悪くなり充血して、強く張って痛みが起こります。
而悪寒
さらに同時に悪寒がするものだと言っています。
ゾクゾクという寒気(さむけ)を感じるものです。
この次の第2条に続くのですが、
悪寒があれば、いずれ発熱があるかもしれないことの前兆だとして、大事な症状として挙げられています。
まとめ
脈が浮いていて、後背部の強張りがあって、悪寒するのが、太陽病なのですが、
悪寒があるだけでは、太陽病とは言い切れませんし、
脈が浮というだけでも、やはり太陽病とは言い切れません。
しかし、太陽病であるならば、
脈が浮だったり、項背の強張りだったり、悪寒だったりが、必ずあるはずです。
病気の始まりにおいて
カゼであれば、風邪(ふうじゃ)の侵入によって起こります。
目に見えないので「風の邪」と表現しますが、ウイルスのことだと考えてみて、
ウイルスはまず、体の皮膚や粘膜などの体表から侵入しようとしており、
身体がそれに反応し、抵抗を開始しようとしている初期の状態です。
そして、第2条へ続く…
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